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第6話 「駅前の出来事」

 週末の午後、いつものように大輔は駅前の本屋に向かっていた。お気に入りのラノベの最新刊が発売された日で、ずっと楽しみにしていた。やっと買える。嬉しすぎです!!学校では、まだ上手く馴染めていないが、本の中の世界は違う。安らぎだな。


「やっぱり、ここだけは落ち着くな…」


 本屋に入ると、整然と並んだ本の山が彼を迎えた。漫画やラノベがずらりと並んでいる棚を見ていると、自然と心が軽くなる。新刊のコーナーに目をやると、目当てのラノベがしっかりと並んでいるのを見て、大輔の心は弾んだ。


「よかった〜、まだ残ってる」


 大輔は迷うことなく最新刊を手に取り、レジに向かった。袋に入れられた本を抱えながら、彼は店を出て駅前の通りへ向かった。週末の街は賑やかで、家族連れや友達同士で出かける人々が行き交っている。そんな中、大輔は一人、静かに歩いていた。


「今日は早めに帰って、この本を読もう…」


 そう考えながら信号待ちをしていた時、ふと視線の先に小さな子供が見えた。小学1年生くらいの男の子が、お姉ちゃんらしき少女の手を振りほどき、向こう側に向かって走り出そうとしていた。


「お姉ちゃん、見て!走るよ!」


 男の子は楽しそうに笑いながら道路に向かって駆け出した。しかし、その瞬間、大輔の目に映ったのは、信号無視をして突っ込んでくる車だった。ドライバーは全く気づいていない。車が猛スピードで近づいてくるのを見た大輔は、体が反射的に動いた。


「危ない!」


 彼はラノベを落とし、そのまま全力で走り出した。男の子に向かって腕を伸ばし、車が迫る寸前に男の子を抱え、道路の端に飛び込んだ。


 ギリギリのタイミングで車はすぐ横を通り過ぎ、男の子は無事だった。大輔は息を切らしながら、男の子をそっと地面に下ろした。


「大丈夫か…?」


 男の子は驚いた顔をして大輔を見上げていたが、すぐにその顔が泣き顔に変わった。彼は大きな声で泣き出してしまった。


「うわああああ!」


 その声を聞いて、男の子の姉らしき少女が慌てて駆け寄ってきた。彼女は高校生か中学生くらいだろうか。涙を浮かべながら、弟を抱きしめている。


「ごめんなさい…!ありがとうございます…!弟が、こんなこと…」


 彼女は涙声で感謝の言葉を何度も繰り返していた。大輔は、少し照れくさそうに笑って手を振った。


「いや、俺は何も…とにかく、無事でよかったよ」


 男の子はまだ泣き続けていたが、姉が優しくその頭を撫でながら慰めていた。大輔はその様子を見ながら、少しホッとした表情を浮かべた。彼もまだ心臓がバクバクしていたが、男の子が無事であることが何よりだった。


「本当に…本当にありがとうございます。もしあなたが助けてくれなかったら…」


 姉の少女は涙を拭いながらも、感謝の気持ちを表し続けていた。大輔は少し恥ずかしそうに、また手を振った。


「いや、本当、大したことじゃないから。気をつけて帰ってね」


 大輔はその場を離れようとしたが、ふと落としていたラノベに気づいた。それを拾い上げ、軽くほこりを払いながら、心の中で独り言をつぶやいた。


「…まさかこんなことになるなんてな。少しびっくりしたけど…まあ、無事でよかった」


 彼は一度大きく深呼吸してから、家に向かって再び歩き出した。


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