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第37話 文化祭 その2

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 第37話 文化祭 その2


 文化祭の活気に包まれた校庭の屋台通りを、大輔、葵、梨香の三人は楽しそうに歩いていた。美味しそうな香りが漂い、どの屋台に立ち寄るかを楽しそうに話し合っていた。途中で、葵が突然立ち止まった。


「お兄、私、クラスで係の仕事があるから、教室に戻るね。梨香ちゃんと一緒に回ってて!」


「了解!!」


「梨香ちゃん。兄をよろしくね〜!」


「えへへ、もちろん!!」

 梨香は大輔の顔をみて明るく言う。


「せっかくだから、今からいっぱい頼っちゃいますからね。先輩!」


(って、ちょっと攻めすぎたかな…?でも二人きりになって…や、やっぱり心臓やばい!)


 内心のドキドキを隠して、なんとか自然に振る舞おうとする梨香の表情は、少しだけ照れた笑顔だった。


「せんぱい、じゃあ次はクレープを買いに行きましょ!」


「いいね、甘いものは別腹だからね!」


 こうして、二人はクレープの屋台に向かい、ストロベリーとチョコレートのクレープを一つずつ注文した。しかし、梨香が「一緒に分けて食べようよ」と提案し、大輔は少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑んで了承した。


 ベンチに腰掛け、クレープを二人で分け合うと、梨香は心の中で緊張を抑えながらクレープを差し出した。


  (大輔先輩へ…積極的にアピールだよ!)


「じゃあ、せんぱい、どうぞ!」


「ありがとう。」大輔はクレープを一口かじり、その美味しさに顔をほころばせた。「これ、美味しいね。」


「う、うん…!」梨香は照れ隠しに笑顔を浮かべながら、同じクレープを少しだけかじった。


(ううう…これって間接キスみたいだよね!? やばい、すごい恥ずかしい…。)


 彼女の顔がほんのりと赤く染まっていくのを、大輔は気づかずにクレープをもう一口食べた。そのとき、梨香の視線がふと大輔の唇に向かう。彼がクレープを食べる動きに合わせて、無意識のうちにじっと見つめてしまっていた。


(あ…ダメだ、つい唇に目が行っちゃう…こんな意識してるの、絶対にバレたくない…!)


 その視線に気づいたのか、大輔も顔を上げ、二人の目が一瞬だけ重なる。ドキッとした梨香は慌てて目を逸らしたが、心臓がさらに高鳴るのを抑えきれない。


(もう、大輔先輩、間接キスなんて気にしないのかな〜?)


「…梨香さんも、このクレープ好き?」


 大輔が何気なく尋ねると、梨香はドキドキしながらも頷いた。


「う、うん!すごく美味しいし、先輩とこうして食べるの、楽しいから…。」


「そうだね、クレープおいしいね!!」


 二人はクレープを食べながら、文化祭の喧騒を楽しみつつも、どこか特別な時間を共有していた。しばらくして、梨香がクレープを少し持ち上げ、再び大輔に差し出した。


「せんぱ〜い、あ〜ん!」


「えっ!?また?」


 大輔は驚きつつも、彼女の無邪気な笑顔に抗えず、再びクレープをかじる。間接キスを意識しているのか、ほんの少し戸惑ったような大輔の表情に、梨香の心は再び高鳴った。


(やっぱり、先輩は優しい…今、この瞬間がずっと続けばいいのに。)


 梨香は心の中で幸せを感じながら、二人だけが分かち合うような静かなときに身を委ねていた。文化祭の喧騒の中で、彼女の心は大輔への思いでいっぱいになっていた。


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