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29話 テスト結果

 放課後の教室は、普段と違って少しだけ賑やかだった。結衣さん、尾上さん、飯田さん、松本さん、そして僕の五人が集まって中間テストの勉強会をしている。尾上さんが教室の後ろの机を動かして、みんなが一つのテーブルを囲む形にした。


「よーし、まずは英語から始めようか。大輔くん、助けてね!」


 結衣さんが笑顔で言う。俺は少しドキッとしながらも、頷いた。英語はそこそこ得意だから、みんなに教える役を任された。


「大輔先生、ここがわからないので教えて下さい。」

「松本さん。ここはこうやって訳すといいですよ。」

「大輔君。めっちゃ頭いいね!ほんと尊敬するわ。実は1位狙っているでしょう~!」

「いやいや。1位は全ての教科で高得点取らなきゃだからね。ただ、目標ではあるよ!!」


「はいはい。次は私の物理教えてほしいな~。」

「飯田さん。このベクトルはね、こうやって解くんだよ。」

「うーん、なるほど。でも、大輔先生、教えるのがちょっと…分かりにくいかも?」

「そ・そうかな?まあ、まだまだ説明方法が下手ってことだね。次は、もうちょっとわかりやすく説明できるように頑張るよ!」

「もぉ~。咲希!!。いいすぎじゃない?」

「結衣~。補正入りすぎだよ!それに、冗談で言ってるだけだよ。」


 松本さんまで加わって笑い声が広がる。俺は少し照れくさくなって、つい手元の教科書を見つめてしまった。


 こうして、和気あいあいとした雰囲気の中、みんなで勉強を進めていった。問題を解いたり、分からないところを教え合ったりしながら、時折ふざけたりもする。


 何かこんな学校生活人生で初めてで本当に楽しい。結衣さんに感謝だな。


 そして、ついに中間テストが始まった。何日もかけて積み上げてきた勉強の成果を試す時だ。みんな、少し緊張した様子でテスト用紙を受け取り、問題に集中していく。


 俺も、最初の科目である数学に向き合った。難しい問題もあるが、勉強会で解いた類似の問題が出ていて、落ち着いて取り組むことができた。他の科目も、予想していた通りの問題がいくつか出ていて、順調に進められた。結衣さんたちも、真剣な表情で解答を書き込んでいる姿が目に入る。


 テストが終わるたびに教室からため息や歓声が聞こえてくるが、俺たち五人はそれほど悪くない手ごたえだった。結果がどうなるか、楽しみなようで少し不安でもある。


 そして、結果発表の日がやってきた。担任の笠井先生から成績一覧の紙を渡され、平均89点で校内で7位だった。


「結衣さん。僕、平均点89点で7位でした。どうだった?」

「やった。何とか大輔君に勝つことができた。えっと、91点の3位でした。」

「さすが、結衣さん。期末テストは勝つからね。挑戦者として次こそは勝つぞ~」

「ふふふ。




「まず、3位。結衣さん、平均点92点。」


 教室中が「すごい!」と驚きの声をあげた。結衣さんは、いつもの優しい笑顔を浮かべながらも、少しだけ照れたように頬を赤らめていた。やっぱり、彼女は本当に優秀だ。


 次に、7位の名前が呼ばれた。


「そして、7位は大輔くん、平均点89点。」


 俺の心臓が一瞬止まったような気がした。まさか自分が上位に入るなんて思っていなかったからだ。周りからも「すごいじゃん!」と声をかけられ、尾上さんが「おいおい、大輔、やるじゃないか」と肩を叩いてきた。


「大輔くん、本当にすごいね!勉強会で教えてもらったおかげかも?」


 結衣さんも笑顔で褒めてくれた。それに尾上さん、飯田さん、松本さんも続いて「大輔、やるじゃん!」と称賛の声が上がる。


「いや、みんなのおかげだよ」と言いながら、俺は照れくさくて目を逸らした。


 こんな風にみんなに褒められるのは、正直言って初めてのことだった。これまで、ボッチだった俺が、こんなふうに誰かと一緒に努力して、結果を出せたことが本当に嬉しかった。


「次はもっと上を目指そうね、大輔くん!」


 結衣さんの言葉に、俺は自然と笑顔がこぼれた。


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