第20話 勉強会の計画
ゴールデンウィークの少し前の夕暮れ、大輔はリビングでソファに座り、スマホをいじりながらぼんやりとしていた。隣では、葵が勉強の合間にストレッチをしている。二人は穏やかな空気の中で、日常的なやりとりをしていた。
「ねぇ、おにい、ゴールデンウィークって何か予定ある?」
「ん?特にないけど…あ、そうだ。結衣さんと一緒に家で勉強会しようかって話が出てるんだ。」
「えっ、結衣さんと?家で二人で?それ、向こうがOKした?」
「ごめん・ごめん。ちょっと言葉が足りなかった。葵も入れて家でやろうって話です。そりゃ、結婚もしていない男女が家に2人っきりっておかしいでしょう。葵がいるのが条件だよ。」
(おいおい。おにい浅見先輩との距離がかなり近くなった気がするんですけど。どうゆうことだろう?梨香ちゃんのことを触れてみてどう回答するか聞いてみようかな)
「そっか〜。そうだよね。ふふふ、おにい、そこまで言うなら仕方ないなぁ。でも、確かに私も一緒にやった方が安心だしね。だったら、梨香ちゃんも誘ったらどう?」
「梨香さんもか…うん、それはいいかもね。じゃあ、結衣さんに聞いてみるよ。」
大輔は早速スマホを取り出し、結衣にライムで連絡を送る。
「えええ!?嘘でしょ?!」
葵は本当に驚いた様子で、大輔を見つめた。
「浅見先輩と、ライムで繋がったの?それって、すごいことじゃない!」
大輔はニヤリと笑いながら頷く。
「そうだろ?初めて家族以外の人とID交換したんだ。」
葵はそのことに感心しながらも、心の中では少し心配もしていた。おにいが急にモテ始めたらどうしよう…。おにいはちょっと不器用なところがあるから、誰かに騙されないか心配になるよ。結衣さんなら大丈夫だと思うけど…。
「でもさ、おにい。ちゃんと私にも報告してよ?大事なことは隠さずに言ってね。」
「もちろんだよ。」大輔は笑顔で答えるが、神社同盟のことだけは心の中に留めておいた。それは、今のところ結衣と自分だけの特別な繋がりで、葵にすら話したくなかった。大輔にとって、初めて誰かと共有する秘密のような感覚だった。
<ライム画面>
(大輔)結衣さん、ゴールデンウィークの勉強会なんだけど、葵が梨香さんも誘って欲しいって言ってるけどいいかな?
しばらくして、結衣からの返信が届く。
<ライム画面>
(結衣)うん、いいよ!葵ちゃんと梨香も一緒なら楽しそうだね。OKです!
だが、スマホを握りしめながら、結衣は心の中で呟いた。
(二人だけが良かったなんて、そんなこと思っちゃダメだよ。梨香を誘うのが正解だし…。でも…何か胸の奥が重い…。これ、何なんだろう…。)
結衣は少しだけ眉を寄せて、そのままスマホを置いた。
「葵。OKもらったから、梨香さん誘っておいて。」
「うん、わかった。でもおにい、結衣さんと二人きりでも大丈夫だったんじゃないの?ま、私がいるなら問題ないけどね。」
「いやいや、葵がいるのが条件だって。とにかく、葵がいれば安心だよ。」
「ふふ、そう言うと思ったよ。じゃあ、梨香ちゃんにも連絡するね。」
その夜、大輔は夕食を終えた後、葵に結衣さんたちとのやり取りを話すことにした。
「実はさ、今日のお昼休みに結衣さんたちとご飯を一緒に食べたんだよ。」
「えっ!ほんとに?」葵は驚き、目を大きく見開いた。「おにいが、ついにボッチ卒業!?それは、すごいじゃん!」
大輔は得意げにドヤ顔をして、「そうだろ?本気出せばこんな感じだぜ!!」
「本気かどうかは知らんけど。でも、よくやったね、おにい!ちゃんと頑張ってるんだね。そういえば、梨香ちゃんも勉強会に誘うって話になったから、ちゃんと準備しておかないとね。」
「だな。飲み物とお菓子くらいは用意しておこうかな。明日にでも学校の帰りに買ってくるよ」
こうして、大輔たちはゴールデンウィークに向けての勉強会の準備を進めていくことになった。葵からの報告では、是非一緒にやりたいと返事があったらしい。良かった。
その夜、再び大輔はライムで結衣とやり取りをすることにした。スマホを手に取り、ライムを開くと、少し緊張しながらメッセージを送る。
<ライム画面>
(大輔)今日、葵から梨香さんに勉強会の話をしたら、喜んで参加するって!
(結衣)そっか、良かったね。楽しみだね。
結衣からの返信は短く、少しだけそっけない印象だったが、大輔はあまり気にせず、再びライムでメッセージを送った。
(大輔)うん、楽しみだね。ありがとう、結衣さん。
スマホを手に、結衣は深く息を吐きながら、再び心の中で呟いた。
(梨香とは勉強を教えたことがあるし仲も良いから別に良いんだけど、何かもやもやするな。)
結衣は気持ちの整理がつかないまま、メッセージを閉じた。




