第18話 神社同盟
夕暮れ時、空は赤く染まり、静けさが漂う八坂稲荷神社に大輔が先に到着した。約束の時間には少し早かったが、神社の境内は人も少なく、穏やかな空気が広がっていた。少し緊張しながらも、大輔は鳥居のそばで待つことにした。
「お待たせ、大輔君。」
「いや、僕も今来たところだよ。」
結衣は少し息を整え、大輔の前に立つと、まっすぐな目で彼を見つめた。
「今日のこと、改めてありがとう。あんな風に先輩に堂々と話してる大輔君を見て、すごくびっくりした。勇気がいることだと思うし、本当に助かったよ。」
結衣の真剣な目に、大輔は一瞬照れたような表情を浮かべた。
「いや、結衣さん、そんな…僕、ただ当たり前のことをしただけだから。」
「でも、やっぱり男の子に詰め寄られると怖いんだよ。お礼させてくれたら、私も安心できるんだけど。」
「…それなら、中間テストが近いし、一緒に図書館で勉強とかどう?あ、僕の家でもいいよ。葵もいるし。」
!?
「そっか。テスト前だもんね、それは良い案かも。じゃあ、大輔君の家でも…いいかな?」
結衣は少し照れたように返事をした。その様子に、大輔も少し驚きつつ微笑んだ。
「もちろん。葵にも言っておくね。さすがに僕一人の時は…中止にするけどさ。」
「そ、そうだね…。でも、大輔君のことは信頼してるから…その…」
結衣の声が徐々に小さくなり、顔が赤く染まっていく。
「ところで、結衣さん。今日も僕、1人でお昼ご飯食べてたでしょ?もし良かったら、今度一緒に食べない?」
「えっ?ご飯、一緒に?」
「うん。ほら、今日は助けてもらったし…それに、同じ教科係だしね。」
「それなら、喜んで!でも…緊張するなぁ。」
結衣は笑いながら「大丈夫だよ、楽しく話せばいいんだから」と、大輔をリラックスさせるように言った。
しばらくして、結衣が少し恥ずかしそうにスマホを取り出す。
「そうだ、せっかくだし…ライムのID、交換しない?」
「ライム?うん、使ってるよ。」
「じゃあ、交換しようよ。」
結衣がライムの画面を開くと、大輔も慌てて自分のスマホを取り出し、IDを交換した。家族以外とライムを交換するのはこれが初めてで、大輔は内心ドキドキしていた。
「初めてが…私なんだね。」結衣は思わずつぶやき、少し顔を赤らめた。
「えっ?」
「う、ううん!何でもない!」
結衣は急いで言葉を濁しながら、再び微笑んだ。
「ありがとう、大輔君。じゃあ、このライム、特別にしようか。例えば、私たち二人だけの『神社同盟』にして、ここで話すことは二人の秘密にしようよ。」
「神社同盟?それって…」
「ふふふ、そうだよ。ここだけで話す秘密のこと。誰にも言っちゃだめだよ、特に葵ちゃんにもね!」
結衣はいたずらっぽく微笑んで、人差し指を口に当てて「内緒だよ」と言った。その仕草に、大輔は少し緊張しながらもうなずいた。
「神社同盟か…なんだか、すごく特別な感じだね。」
「そうだよ。だから、これからも二人だけの秘密を守ろうね。」
結衣は再び顔を赤らめ、大輔は少し緊張しながらも、その提案を受け入れた。
ふと、大輔は思い出したように口を開いた。
「そういえば、クラスでも結衣さんって呼んだ方がいいのかな?」
結衣は少し考え込みながら答えた。
「うん、クラスでも呼んでくれたら嬉しいかな。でも、無理しなくてもいいよ。大輔君が照れるなら、今まで通りでも。」
「いや、できるだけ頑張ってみるよ。」
大輔は少し赤面しながら、結衣を見つめた。その様子を見た結衣も、心の中で少し喜びを感じつつ、微笑んだ。
大輔はライムの画面を開き、家族以外で初めて送るメッセージを入力した。
「結衣さん、今送ったよ。」
<ライム画面>
(大輔)よろしくお願いします!
(結衣)神社同盟、これからよろしくね♡
二人は少し照れながらも、そのメッセージのやりとりを交わした。そして、彼らの間に流れる新たな絆が、少しずつ深まっていくのを感じた。
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