第13話 教科委員のお仕事
2限目が終わった休み時間に、浅見さんと一緒に担任の笠井先生へ御用聞きに行く途中、浅見さんが話しかけてきた。
「城山君、昨日はいい服見つかった?」
「うん。葵がいろいろ悩みながら服を選んでくれて、僕は完全に着せ替え人形状態だったよ。」
「ふふふ、着せ替え人形って、面白い表現だね。」
「まあ、こんな情けない兄貴に付き合ってくれて、本当に良い妹だよ。」
浅見さんは少し笑いながらも、どこか寂しそうな表情を浮かべた。
「いいなぁ、兄妹仲が良くて。私は一人っ子だから…幼馴染で妹みたいな子はいるけど、やっぱりね、なんか違う気がするんだよね。」
浅見さんは目を伏せ、少し沈んだ表情で歩調を緩めた。
「そっか〜。でもさ、幼馴染でも本音で話せるなら、血が繋がってなくてもいいんじゃない?そんな関係ってなかなかないと思うよ。」
浅見さんは足を止め、大輔の方をじっと見つめた後、ふっと笑った。
「そうだね。そんなふうに言われたの、初めてかも…。」
「そ・そうかな?ちょっと変なこと言った?」
「ううん、違うの。なんか、こういう話って今まで城山君としかしたことがなくてさ。少し新鮮かなって。」
「そうなんだ。僕は浅見さんみたいなクラスの中心にいる人なら、こういう話をもうたくさんしているんだと思ってた。」
浅見さんは一瞬、沈んだような表情になり、肩を少し落とした。
「それは…実は、そんなことなくてね…。」浅見さんが話を続けようとした瞬間、彼女は急に大輔をじっと見つめ、微笑んだ。そして、まるで何かを含むような口調で、からかうようにこう言った。
「でも、城山君はどうかな〜。もしかして、誰かに話したくなる相手がいるとか…?」
その曖昧な言葉に、大輔は一瞬息を呑んだ。「もしかして何?」と心の中で動揺し、顔が赤くなってしまった。
「も・もう〜。浅見さん、すぐに僕をからかうんだから。」
浅見さんは笑顔を浮かべて、少し嬉しそうに言った。
「ふふふ。でも本当だよ、城山君。」
「えっ…?」
そう言われた瞬間、浅見さんは少し前を向き直りながら小さな声で、「あ、職員室ついたよ。」と告げた。
筆者の励みになりますので、よろしければブックマークや★の評価をお願いいたします。温かい応援、よろしくお願いいたします。