Dream9 「黄色い声援」
Dream9
「黄色い声援」
■登場人物
・俺
・バンド仲間(V男、B助、G太)
・プロデューサー
俺は音楽の専門学校にいる。
今は課題提出の為に1人でスタジオに居た。
ドラムの自由演奏の課題だった。
問題なのは、使うドラムだ。
なぜか普通のドラムではない。
子供が遊ぶオモチャの電子ドラムだった。
そのため叩ける場所も少なく、欲しい音も足りない。
こんなものでどうやって音源を作ればいいものか。
俺 「悩んでいても仕方ないわな・・・」
俺はとりあえず、自由に限られた音で叩き始める。
基本的なリズムや少し崩したリズム。
色々なものを混ぜて叩き始める。
俺 「(なんか楽しくなってきたかも・・・!)」
叩ける箇所が少なくても、意外とできることは多く
課題とかは関係なくただただ楽しんでドラムを叩き続けた。
すると、スタジオの外から拍手が聞こえてきた。
俺 「え?」
スタジオのドアを開き入ってきたのは、
国民的にも超有名なバンド〇〇のメンバーだった。
俺 「うわ!!!〇〇のメンバーの皆さんじゃないですか!?
どうしてここに!?」
V男 「実は今後ドラムが居なくなるもんでね
どうせならと思って専門学校に宝探しに来てたのよ」
G太 「お前スゲーじゃん!!」
B助 「こりゃ早めにいいのが見つかったわ」
俺 「いやいや!!!叩いてるのこんなオモチャですし!!」
V男 「俺たちの曲で何かわかるのある?」
俺 「いや!ほとんど知ってますよ!当たり前じゃないですか!」
V男 「じゃあ今、軽ーくやってみよっか!」
俺 「え!?」
G太 「いいじゃーん!」
俺 「そんなこと言われても譜面もないですし!
おもちゃのドラムしかないんですよ?」
B助 「大丈夫。好きに叩いていいよ?
合わせるからさ。」
俺 「(うわぁ~かっけぇ!!!しかもこんな機会滅多にないぞ!!)」
V男 「じゃあこの曲でいいかな?」
俺 「なんでも大丈夫です!」
V男が歌いだす。
そしてそれに合わせて周りも演奏しだす。
俺 「(緊張するけどやらなきゃ!!)」
俺もオモチャのドラムで思うように叩いてみる。
バンドの皆さんがこっちを見て笑いながら合わせてくれている。
俺 「(楽しい!!!すごく一体感がある!!!やっぱプロは違うな!!!)」
無我夢中で叩き続ける。
そこから何曲叩いたかわからない。
気づけば俺のいた専門学校のスタジオは
プロのスタジオに変わっていた。
マネージャー 「はい!OK!!!いいじゃん君!」
俺はメンバーを見る。
みんなグッドサインを出してくれる。
マネージャー 「新メンバーは君で進めていいと思う!」
俺 「本当ですか!?ありがとうございます!!!!」
ついにプロデビューだ。
しかもこんな国民的なバンドのドラムだなんて!
夢のようだ!
G太 「やったね!」
V男 「これからは同じメンバーとしてよろしくな」
B助 「いつでも頼ってくれていいからね」
俺 「はい!よろしくお願いいたします!!!」
しかし、ひとつ気になっていることがある。
俺 「僕のドラムって、このままなんでしょうか・・・」
未だにオモチャのドラムである。
G太 「いい味出てるよ?」
俺 「そうですか?でも既存曲とかに合わないというか」
V男 「まぁこれから新しいメンバーで新しくなっていくんだから
いいんじゃないかな?」
B助 「既存曲もまたリニューアルしていこうよ」
俺 「まぁ、皆さんがそうおっしゃるなら・・・」
本音としてはちゃんとしたドラムを叩きたいけど、
プロが言うなら信じよう。
不安を抱えながらも、
新曲や既存曲もレコーディングと練習を重ねた。
そしてとうとう新メンバー加入と新曲発表も兼ねた
コンサートが始まるという。
会場自体は大きな会場ではないらしい。
ショッピングモールの最上階にコンサートホールがあるのだ。
そこが初舞台となる。
コンサートの当日、舞台裏で待機をしていると、
ファンたちのざわめきがずっと聞こえている。
流石に国民的なバンドなだけはある。
V男 「自信持てよ?いつも通り自由に楽しくな」
G太 「そうそう!」
B助 「お前なら大丈夫だし、フォローだってするから」
俺 「はい!頑張ります!」
そうしてコンサートが始まる。
ファンたちの発狂ともいえる声圧が襲い掛かる。
ファン 「キャー!!!!!!」
俺 「すっげー!」
こっち側から見る景色はライトもありほとんど見えないが、
確かにそこにお客様はいて、微かに見えるペンライトで
満席であることなんて容易に想像できる。
鳥肌が立つとともに、ワクワクが止まらない。
V男が歌いだした。
俺も演奏を始める。
そこからはあっという間に時が過ぎていった。
夢のような時間だった。
途中のメンバー紹介の時間で
各々が自由に演奏する。
俺も新メンバーとして紹介され自由に叩いた。
オモチャのドラムで。
そして当然、アンコールもあり全ての曲を終えた。
歓声とともに舞台裏へと戻る。
バンドメンバー 「おつかれ~!!!!!!」
みんなで輪になって抱き合う。
俺 「最っ高に楽しかったです!!」
V男 「最初のライブで楽しめたんならお前を入れて正解だったよ」
B助 「演奏もミスもなく素晴らしかったぞ?」
G太 「よく頑張ったね!!」
俺 「ありがとうございました!!!」
そして楽屋に戻り休憩しつつも、自身の服に着替えて会場から出る。
エレベーターに乗るとプロデューサーが現れて一緒に降りることになった。
G太 「このプロデューサー、態度にすごく厳しくてみんなからも嫌われてるから
気を付けてね?」
G太さんが小声で教えてくれる。
プロデューサー 「いやーよかったよ!お疲れ様!」
V男 「ありがとうございます」
俺 「初めまして。新メンバーの俺と申します。
これからもよろしくお願いいたします。」
プロデューサー 「うんうん。君もよかったよ!」
俺 「ありがとうございます!」
B助 「・・・ナイス!」
B助さんも小声で先に挨拶したことにOKサインをくれる。
プロデューサー 「いやぁ、君たち位ならもちろんもっと大きな会場でもよかったんだけどね?」
V男 「とんでもないです」
プロデューサー 「やっぱ新人君がいるとね?今までと集客も変わってくるでしょ!
念のためこのくらいにしておいて良かったんじゃないかな?」
俺は複雑な気持ちになる。
確かに俺じゃなければもっと大きな会場でやることなんて簡単にできたであろう。
G太 「ちょっとそれ・・・・っ!」
何かを言いかけるG太をB助が冷静に止める。
V男 「お心遣いありがとうございます。」
プロデューサー 「全然気にしなくていいよ?こっから頼むね?」
そうしてエレベーターの扉が開いた。
ショッピングモールであるため、普通のお客様たちが買い物をしている。
私服に着替えはしたがすぐに視線が集まる。
客 「あれV男じゃない!?」
客 「G太もB助もいるよ!!!!!」
V男達は慣れた様子で手を振って流す。
客 「これからも応援してます!!!!」
客 「キャー!!!!ライブ最高でした!!!」
どんどん黄色い声援が聞こえてくる
その中に俺の名前はない。
当然だ。
ネットやテレビで新メンバー加入の話題が出たとはいえ
今日初めてライブに出たのだから。
当然なのに悔しい自分もいる。
さっきまで全員で演奏していたはずなのに、
自分だけメンバーじゃないような疎外感。
誰でもいいから俺を見てほしい。
プロデューサー 「な?君はまだこんなもんなんだよ。」
G太 「っ!」
今にも殴りかかりそうなG太さんを今度は俺が止めた。
俺 「・・・はい」
すると近くにアナログゲームのエリアがあった。
B助 「プロデューサーは、やっぱりアナログゲームもかじったりしているんですか?」
プロデューサー 「ん?あぁ一応全ジャンルの情報を取り入れるのが常識だからね?」
俺 「(絶対知らないんだろうな・・・)」
B助 「では少しやっていきませんか?」
プロデューサー 「あーうん、いいけど?」
そうしてアナログゲームのなかでも比較的簡単な
カードゲームをやる事になった。
プロデューサー 「あ、これは初めてだなぁ」
G太 「アナログゲームなんて絶対やったことないだろうねw」
G太はニヤニヤしながら俺に言ってきた。
俺 「多分そうですねw」
簡単にB助がルール説明をする。
先攻と後攻があるらしい。
B助 「では、お先にどうぞ」
カードゲームが始まった。
V男はプロデューサーの後ろでサポートをしている。
プロデューサー 「うーん、じゃあこれでどうかな?」
B助 「お、いいですね。そうきますか。」
何ターンか終わったころ、俺は確信した。
俺 「(これプロデューサー勝てないぞ?)」
プロデューサー 「・・・うーん?」
V男 「プロデューサー。このゲームはもう厳しそうですね。」
プロデューサー 「なんだ負けか!?くそ~!」
B助 「すみません。いやでもなかなかいい勝負でした。流石ですね」
プロデューサー 「まぁ初めてだったからな?仕方ない!
君はこのゲーム知ってるのかい?」
俺 「あ、いえ!初めて知りました!」
プロデューサー 「じゃあ僕と勝負しようじゃないか!
B助くんはこっちでサポートしなさい。」
B助 「わかりました。」
俺 「(うわ、ずる!さっき勝ったB助さんにサポートお願いしてる!
マウント取りたいだけじゃん!!)」
V男さんが僕のサポートとして後ろについてくれた。
そして耳打ちしてくれる。
V男 「・・・先攻は譲って」
俺は言われたとおりにする。
俺 「プロデューサーからどうぞ!!」
プロデューサー 「よしわかった!B助くんどうすべきだ?」
G太 「もう普通に聞いちゃってるよw」
俺 「G太さん、シーッ!!!」
するとまたV男さんが耳打ちしてくる。
V男 「・・・実はこのゲーム、ある方法をとれば先攻は必ず負けるんだよ」
俺 「・・・え、そうなんですか!?」
俺はV男さんの指示のもとカードゲームを進めていく。
俺 「あ、ほんとだ・・・これ勝てる・・・」
プロデューサーはまだ気づいていないようだ。
B助さんはこっちにウインクで合図をしてくれる。
プロデューサー 「う~ん。どうしたらいいんだ?」
B助さんは適当に指示を出している。
俺 「すみません。これで・・・」
俺は最後の一手を出す。
B助さん 「プロデューサー。このゲームはもう勝てないですね」
プロデューサー 「なんだって!?また負けか!?」
俺 「すみません!」
G太 「ま、所詮ゲームですからw」
V男 「こんな日もあるでしょう」
プロデューサー 「つまらんな!!私は忙しいから帰らせていただくよ!」
プロデューサーは真っ赤な顔で帰っていった。
G太 「ざまみろ!!」
V男 「流石に大切なメンバーをあんな扱いされたらな。
B助だって黙ってられなかったんだろう」
B助 「せっかくの新メンバーが居なくなるのも困るからな」
俺 「みなさんありがとうございます!!」
V男 「お前はもう立派な仲間だから安心しろ」
G太 「あ!記念にプリクラ撮ろうよ!」
B助 「プリクラ!?」
俺 「あんまり撮る機会ないですもんね!」
V男 「今日くらいはいいかもなw」
そうしてゲームコーナーでみんなでプリクラを撮った。
別人のように大きくなった目で元の顔の原型など無かった。
俺 「B助さん女じゃないですかw」
B助 「もう助けてやらんぞ?」
G太 「いやこれは女でしょw」
V男 「だなw」
俺達4人は笑いながらゲームセンターを楽しんだ。
太鼓の〇人では俺が1番うまかった。
恐らく華を持たせてくれたんだろう。
こんな時間が続けばいいのにな。
~~おはよう自分。
さっき見た夢からすぐに寝てしまっていたようだ。
寝ていた1時間半くらいか・・・
今回の夢は寝ている時間も短かったからとても短い夢だったけど
楽しかったな。
自分のやりたいことができて、夢が叶って。
きっと俺にはもう体験のできないことだ。
それでも誰かに見てもらいたいんだろうな。
もともと役者をやっていたのだって承認欲求が高いからだ。
いつだってちやほやされたい。
でも今の気分は違う。
ちやほやではなく、頑張ってる俺を誰かに見ていて欲しい。
頑張ってると褒めてほしい。
頭を撫でて抱きしめてほしい。
癒されたい。
助けてほしい。
起床