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Dream8 「部活」

Dream8

「部活」



■登場人物

・俺

・顧問

・部員

・父

・猫

俺は高校生で部活動に励んでいた。

野球部である。


毎日放課後になると、付近にある野球場に行き練習をする。


しかし、練習内容は体力トレーニングばかりだ。

ランニング、筋トレ、そして、なぜか水泳。


ボールやバットにすら触れさせてもらえない。

どこぞのアニメの強豪校でもあるまいし、人数だって少ないのだ。

ましてや北海道の田舎校なんて、冬以外にしかまともな練習はできない。


他の部員たちも不満は溜まっている。


そんな不満の中でも、一番の不満はこれだ。


顧問 「あれ?正しい姿勢で腹筋すらできないのか?

    こんなんじゃ先が思いやられるな・・・」


顧問の態度だ。


顧問 「勉強だってろくにできないんだから、運動くらいはまともにやったらどうだ?」


部員 「はい!すいません!」


俺  「くそが・・・言い方ってもんがあるだろ・・・それでも教師かよ」


顧問 「はい、つぎ腕立て~。」


部員 「はい!!」


それでも必死に食らいつくしかない。


実際に身体に変化は現れてきている。

夏の海では視線を集められそうな身体になってきた。


ただ、野球のできない環境に飽き飽きしていた。


俺  「つまんな・・・」


顧問 「なんか言ったか?」


俺  「何でもないです!最高です!」


顧問 「そうか、きつくもないか?」


俺  「はい!」


実際俺は、トレーニングに慣れすぎて淡々とこなすだけになっていた。


顧問 「ならお前は今日他のメニューはしなくていい」


俺  「?・・・はい!」


顧問 「球場の周りを部活終わりまで走ってろ」


俺  「はい!」


正直、ランニングも余裕だった。

軍隊にでもされるんだろうか。


そして部活動終了1時間前に、部員全員が呼び出される。


顧問 「集合」


部員 「はい!!」


顧問 「最後の1時間、いつも通り人助けをしてこい。

    終わったものからここに再度集合し解散とする」


部員 「はい!!」


俺  「(これ毎日やらされるけど一番意味が分からないんだよな

    ボランティア部じゃないんだぞ?)」


とりあえず、俺は球場回りに困っている人がいないか探してみる。


俺は大きな荷物を持ったおばあさんを見つけた。


俺  「(困っている人で思いつく人ランキング1位だろこれ)」


俺  「大丈夫ですか?」


おばあさん 「ちょっと買い物する量が多くてね・・・

       ちゃんと考えて買わないとだめねぇ?」


俺  「よかったら運びますよ?」


おばあさん 「あら、いいの?」


俺  「はい!どうぞどうぞ!」


俺は荷物だけでなく、おばあさんをおんぶして

家まで送り届けた。


おばあさん 「ありがとうねぇ。何かお礼を・・・」


俺  「あ!いいんです!いいトレーニングになりましたんで!

    では失礼します!」


俺は急いで球場に戻る。


顧問 「戻ったか。やはりお前が一番早いな」


俺  「偶然困っている方が近くにいたので」


顧問 「まぁ理由なんてどうでもいい。

    今日はもう帰宅しろ。」


俺  「はい!お先に失礼します!ありがとうございました!」


俺  「(まじでなんなんこいつ!!!むかつくわ!!!)」


次の日、俺は学校で他の先生に相談をした。


俺  「あの顧問どうにかなりませんか?

    態度も口も悪いし、このままじゃ部員も減り続けて廃部になりますよ?」


先生 「まぁ不器用な先生だからねぇ」


だめだ。聞く耳を持たない。


俺  「そうですか。もういいです。」


そして放課後になりまた部活動が始まる。

相変わらずのトレーニング。


なぜか横にずっと顧問がいてこちらを見ている。


顧問 「・・・・」


俺  「(気まずいな・・・)」


顧問 「おまえもう今日は上がっていいぞ」


俺  「・・・え?」


顧問 「水族館にでも行ってこい」


そう言って、水族館のチケットを渡された


俺  「・・・水族館?」


顧問 「嫌か?」


俺  「いえ!動物園より水族館の方が好きです!」


これは本当だ。

静かな雰囲気や暗い雰囲気が落ち着くのだ。


顧問 「動物園のことはどうでもいい。

    はやくいけ!!」


俺  「は、はい!!!」


俺はチケットを握りしめて水族館へと走った。


俺  「意味わからんのよな・・・

    なんかもう全部わからんのよ・・・」


なぜ俺だけ?

なぜ水族館?

なぜ部活動の時間に?


しかし、そんな疑問など水族館に着いたら消えてしまった。


俺  「お魚綺麗~心洗われる~」


この薄暗い中でキラキラ光るお魚たち。


俺  「こいつらも、もっと広い場所で泳ぎたいだろうな。

    でもな?海や川には敵がいっぱいいるんだぞ?

    そう考えれば、ここでも十分幸せな生活なんだよ?

    飯に困らないのも大きいしね?」


俺は魚に話しかける。


そして、あまりにも長い独り言を魚に対して話していることに絶望した。


俺  「(周りに人がいなくてよかった・・・)」


アナウンス 「まもなく閉園の時間です。」


俺  「え!?もうそんな時間!?」


時間も忘れて魚を見ていたらしい。

そしてふと部員たちの事を思い出す。


外に出ると辺りは暗くなっていた。


俺 「(みんなは今頃人助けの時間だろうか)」


すると、前方から車がやってきて目の前に止まった。


父  「おう、迎えに来たぞ」


俺  「父さん?よくここにいるの分かったね!」


父  「お前、球場の方大変らしいぞ?」


俺  「え、なんかあったの?」


父  「猫が大量に発生して暴れてるんだと。

    だから見に行ったらお前がいないもんだから」


俺  「まじか!手伝いに行かないとじゃん!!送って!!!」


父  「送るために来たんだから、早く乗れ」


俺  「ありがとう!」


俺は助手席に乗り込む。

シートベルトをしようとしたときだった。


―ブオーッ!!!!!!


車が急発進する。


俺  「うお!!!そんな急がなくても!!!」


続いて急カーブ。

思い切りハンドルを切っている。


父  「ちゃんと捕まってろよ?」


俺  「それ発進する前に言うやつだから!!!

    あと、シートベルトも出来てないしー!!!!!」 


乗っているのはワゴン車だったが

タイヤの音がF1のようだ。

ドリフトもかましてくる。


俺  「危ないって!!!!着く前に死ぬって!!!!!」


父  「何言ってんだおまえ、このくらい大したことねーべやw」


俺  「いや、笑い事じゃなくて!!!!

    ほら!!!前!!!赤信号!!!!!」


平気で赤信号を無視してUターンをかます。

そしてそのまま球場へ続く歩道を突っ走る。


俺  「いや、まじで何してんの!!!!!

    歩道はまずいって!!!!捕まるって!!!!」


―キキッー!!!!!



父  「・・・・着いたぞ」


俺  「いやカッコよくないから・・・まじで・・・」


どんなトレーニングよりも心拍数が上がり息が上がった。

とりあえず車を降りて球場付近の状況を確認する。


部員 「おい!!待てって!!!」


部員 「痛い痛いっ!!!!」


部員 「そっちいったぞ!?」


なかなか騒々しい状態になっていた。

何匹もの猫を部員たちが必死で追いかけている。


俺  「こりゃすげーな・・・何事?」


顧問 「おまえ戻ってきたのか」


気づくと顧問が隣にいた。


俺  「なんか大変だって聞いたので!」


顧問 「すごいよなこれ!!どうなってんだろうな?はははっ!!!」


普段笑いもしない顧問が凄く笑ってる。

気持ち悪い。


こういう大変な状況とか、人があたふたしてんのが好きなんだろうな。


俺  「(こわっ。性格悪っ。)」


顧問 「お前ならこれどうする?どうにかできるか?」


俺  「はい!行けると思います!!」


最近の自身のフィジカルと体力をもってすれば

猫くらい捕まえられるだろう。


顧問 「よし!いってこい!!!ははははっ!!!!!」


俺  「はい!(もう人変わっちゃってるよ・・・)」


俺は走りだした。

まずは部員たちの元にいこう。


父  「よし、やるかー」


そんな俺を追い越していく父。


俺  「・・・え?」


父がはしゃいでいる姿も滅多に見ない。

普段口数だって少ない方だ。


ましてや走る姿なんて俺の小学校の運動会の早朝に

1番前の席を取るのに走っているのを見た時以来だった。


父  「よいしょー!」


父はどんどん猫を捕まえて

いつの間にか用意している大きな箱に閉まっていく。


あっという間に猫がいなくなっていく。


俺  「・・・・え~・・・なにその才能・・・」


部員たちも唖然としている。

もう、近くに猫の姿はない。


父  「こんなもんかな?」


顧問 「さすが親子だな!!」


俺  「どの部分を指して仰っているのか分からないんですけど・・・

    僕あんな感じですか?」


顧問 「あんなもんだろう?」


部員 「ぶっちゃけ、あんなもんだよ?」


俺  「どういうこと!?」


部員 「今だから言うけど、トレーニング普通の顔してこなしてるのお前だけな?

    正直、怖いよ?」


俺  「あ、俺ってあんな感じに見えてるのか。

    ちょっと気を付けるわ・・・」


父  「じゃあこの猫たち役場に連れてくわ」


顧問 「お願いします」


役場でどうするのかは知らんが

父は去っていった。


俺は何もしなかったが、とにかく騒動が収まったのなら良しとしよう。


顧問 「ほら、おまえら終わったんなら帰る準備をしろ」


部員 「はい!!」


帰る準備をしようとした時だった。


部員 「いてぇ!!!!」


部員 「うわぁ!!!!」


奥の方から次々と部員の叫び声が聞こえてくる


俺  「次は何!?」


奥の方から走ってくるのは

さっきまでの猫より一回りも二回りも大きい猫だった。


俺  「まだいたの!?」


次々と部員が引っかかれて倒れていく。

そして俺に飛びかかってくる。


俺  「おいしょー!!!」


俺は飛びかかってきた猫の腹を捕まえて、

そのまま草原に寝転がす。


猫  「やるなおまえ」


俺  「うわ!しゃべった!!!」


猫  「この手を放せ」


俺  「いや暴れるでしょ?無理よ!」


猫  「さもないとどうなるかわかってるのか?」


俺  「いや知らんけど・・・

    とりあえず落ち着こうよ」


俺は猫にマッサージをしてあげた。


猫  「・・・おぉ、こりゃいいなぁ」


何とか落ち着き始めたようだ。

数分マッサージをしてあげた。


猫  「もうよい。なにもせん。」


俺  「ほんと?じゃあおしまいで」


俺は猫から離れる。

すると猫が俺にジャンプしてきた。


俺  「なになに!?」


おれは猫を抱きかかえる。


猫  「お前が気に入った。わたしを連れて帰れ」


俺  「はあ!?嫌だよ!!!」


猫  「なぜだ?」


俺  「こんな問題起こして、しかも言葉話す猫なんて怖すぎるだろ!?」


猫  「マッサージしてくれるなら、もう面倒なこともせん!」


俺  「いや、めんどくさいし!!!」


俺は近くにいる部員に猫を押し付けた。


部員 「え!?」


猫  「シャー!!!!」


猫はめちゃくちゃ威嚇している。

どうやら言葉を話すのは俺の前でだけらしい。


俺  「そいつ任せた!!!!」


俺は猛ダッシュで逃げる。


部員 「え、ちょっと!?無理だよ!!」


後ろで部員の悲鳴が聞こえたが関係ない。

俺は振り返らずに全速力で逃げた。




~~おはよう自分。

  今日は朝から目眩が止まらない。

  目眩なのかも定かではないが、

  動くと脈に合わせて全身に電気が走るような

  そして脱力するようなふらつきがする。


  俺は職場に行ったがあまりにも症状が治まらないため

  仕事を休むことにして帰ってきてからすぐに寝た。

   

  さて、夢のことだが俺の父は数年前に亡くなっている。

  その父が夢に出てきたのは父なりに心配でもしてくれているのだろうか。

  実際、今俺は家族にも誰にもSOSを出せない精神状態になっている。


  今回父が事態を収拾して助けてくれたのは俺の願望でもあるのだろうか。

  そして他の人より強い俺というのも今の俺の願望なんだろう。

  強くならなければならない。物理的にじゃない。精神的に。

  誰の助けも必要としないくらいに。


起床

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