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Dream4 「とある村の女の子」

Dream4

「とある村の女の子」



■登場人物

・俺

・女の子(Mちゃん)

・同級生たち

・村人たち

病気休暇を取っていた俺は、今日から仕事に復帰できることになった。

2か月間程休暇をもらっていたため、仕事内容も忘れていることが多く、

研修用のカリキュラムを組んでもらえた。


上司と研修室へ移動し、プロジェクターを利用して研修用のビデオを見ることになった。

見る内容は新人研修時に利用する教材であるとのことであった。


上司 「焦ることはないよ。1つずつ思い出していけばいいからね」


俺  「すみません。ありがとうございます」


そうして研修室の電気は消され、教材ビデオが始まる。

流れてきた内容は高校生の修学旅行の映像だった。


俺  「ん?こんな始まりだったか?」


実際に俺も入社時に見ているはずだが、こんな内容だった記憶はない。

教材が新しくなったのだろうか。


よく見ると、その映像には高校時代の同級生が映し出されていた。


俺  「あれ?あいつじゃん・・・」


そして続けて自分も映し出された。

カメラに近づきピースをする俺。


場面が変わり、なにやらテンション高く友達とじゃれ合っている俺。


あまりにも自分だけが映し出されることが恥ずかしくなってきた。


俺  「ちょっと!僕ばっかり映ってませんか!?何の映像なんですかこれ!?」


後ろを振り返ると、そこには上司の姿はなかった。

代わりにいたのは高校時代の同級生たちと先生。


周りの景色も研修室ではなく居酒屋だった。

どうやら大人になったみんなで集まり同窓会を開いているらしい。


先生 「別におまえの映像を集めているんじゃなくて、

    おまえがカメラを見つけると寄ってくるからだろ?」


俺  「いや、そうだとしても編集でどうにか平等にできるでしょう!!」


同級生たちが笑う。

この映像は今回の同窓会のために先生がわざわざ用意をしてくれたようだ。

嬉しいことをしてくれるじゃないか。


久しぶりにみる同級生たちがお酒を片手に盛り上がっている。

みんな大人になったんだなと思いながら自分の前に置いてあるお酒に手を伸ばした。


俺  「く~!!!うめぇ!!!」


そして、映し出されている映像に視線を戻す。

流れている映像にはとある村が映し出されていた。


そこはかなり山奥の村で現代とはかけ離れた生活をしているらしい。

俺達はそういった独自の風習を勉強するため、修学旅行でその村を訪れたのだ。


なにも整備されていない山道を楽しそうに歩いている自分たちが映っている。


俺  「(そうそう!道路とかなくてどっかの民族を訪ねてるような感じだったんだよ!)」


そう考えていると、俺はいつの間にかその山道を歩いていた。


男友達 「いやーくそ楽しみじゃね!?」


俺  「楽しみだけど、田舎出身の俺たちが田舎訪れて何か学ぶことなんてあるか?」


男友達 「いやマジでそれな!!」


そんな他愛もない話をしながら歩いていると

大きな広場に着いた。


先生 「ほら!ついたぞ!みんな集まれ!」


俺達はその広場に集合して整列する。

俺は背が小さいため一番前に並ぶ。


目の前には村の人たちがずらっと集まっており

あちらも整列して丁寧に歓迎してくれている。


おばあさん 「みなさん、ようこそ、おいでくださいました。」


真ん中に立つ着物を着たおばあさんが挨拶をする。

村長か?


おばあさん 「なにもないところではございますが、どうぞ楽しんでくださいね」


生徒たち 「よろしくお願いします!」


おばあさん 「ではまず、歓迎のおもてなしとして村の踊りを皆さんで踊りましょう」


男友達 「うえーい!!楽しそう!!」


俺  「確かに!面白そうだな!!」


おばあさん 「踊る前に女の子の皆さんはせっかくですから

       私たちの普段の服装にお着替えください」


そう言われて、おばあさんの後ろにいる村人たちを見て気づいた。

全員が若い女性で、白くて薄い着物だけを着ている。

本来はその上にもう一枚着物を着るのではないだろうか?


俺  「うわぁ・・・えろ・・・」


可愛い子とスタイルのいい子ばかりが集まっている。

まるでアイドルグループのようだった。


男友達 「やばくね!?女子たちこれ着るの!?最高かよ!!」


俺  「確かにやばいな!踊りどころじゃねーぞ!?」


女子たち 「え!?あれ着るの!?嫌なんだけど!!」


それでも先生は止める様子は全くない。


俺  「僕たちは何か着るものはありますか?」


おばあさん 「この村には男性は1人もいないんですよ。

       だから男の子達はそのままでいいですよ。」


なんなんその漫画でしか出てこないような村!?

移住したいんですけど!?


当然、女子の着替えを見つめる俺達。


女子 「おい!こっち見るな!!!」


俺  「見て何が悪い!?それはこの村の正装だぞ!?

    今まさに村について学んでいるんだよ!!」


女子 「バカじゃないの!?」


そして、着替えを済ませた女子と村人の女性、男子で輪になり踊りが始まる。

これは完全に盆踊りだ。

よくある振り付けであるため難なく踊れる。


そんなことより、前後の女性や女子が気になってしまう。


踊りが終わったところで、次の場所への移動の準備のため

先生とおばあさんが話し合いをしている。


その間、輪になった状態で全員座り雑談をしている。

横にいる女性が俺の腕に絡みつきながら話しかけてくる。


女性A 「楽しかったですか?」


俺  「あ、はい・・すごく楽しいです」


女性A 「泊まる場所って遠いの?」


俺  「いや、そんなに遠くはないっすね・・〇〇って民宿で・・」


すると、もう片方からも女性が寄ってきて挟まれる形になる


女性B 「あ!そこなら近いですね?」


女性A 「私たちで夜あそびにいってもいいですか?」


俺  「え!?遊びにですか!?」


女性B 「逆に来てくれてもいいですけど?」


なにこの状況・・・!?

頑張れ俺。理性を保て。


ただのおもてなしだ、これはおもてなしだ。


俺  「待ってます。」


おもてなしならば受けねばならんだろう。

仕方ないことだ。


先生 「よし!全員移動するぞー!

    事前にそれぞれが決めている班に分かれろ!」


くそ。もう終わりかよ・・・

そう思いながら移動を開始する。


川下りを体験する班、児童施設を見学する班があり、

大半は川を下るのだが俺は児童施設を選択していた。


理由は知らん。

ただあの女性たちも川を下るらしいので

もしその前情報があれば迷わず川を下っていただろう。


俺は後悔しながら児童施設を訪れた。

村には似合わない現代風の施設だった。


この施設では子供1人に対して生徒1人が相手をすることになり、

プレイルームのような広い場所で遊ぶことになった。


ただ、俺の相手だけは違う場所にいるようで

俺は職員に連れられ、相手をする子供の部屋に通された。


職員 「この子は少し特別で、部屋から出ることはできないんです」


俺  「はぁ、そうなんですね」


俺 「(広いな・・・)」


子供1人に対しては広すぎる部屋で、ベットも無いし机も椅子もない。

熊のぬいぐるみが1つと積み木が少しあるだけ。


女の子 「こんにちわ!」


目線を下に落とすと自分のお腹くらいの背丈の女の子が

ボロボロのパジャマを着て立っていた。


俺はその子の視線までしゃがみ頭に手を置いた。


俺  「こんにちわ!今日はよろしくね!」


女の子 「うん!早くあそぼ!ずっと楽しみにしてたの!!」


俺は手を引っ張られぬいぐるみの近くへ連れていかれる。


俺  「(何が特別なんだろう、元気でいい子だけどな・・・)」


俺  「名前はなんていうの?」


女の子 「Mだよ!ねぇねぇ見て!くまさん!!可愛いでしょ?」


俺  「Mちゃんね!うん!かわいいくまさんだね!」


Mちゃん 「でしょ?」


俺  「くまさんの名前は?」


Mちゃん 「くまさん!」


俺  「そのままなんだw」


Mちゃん 「名前を付けると次の人にあげるとき困るでしょ?」


俺  「そ、そっか」


大人びた子供だなと思った。


俺  「何歳なの?」


Mちゃん 「100歳だよ!」


俺  「100歳?w」


Mちゃん 「そう!このくまさんには私の分の命も分けたから100歳!」


俺  「?君は何歳?」


Mちゃん 「7歳!」


さっきの回答に違和感を感じた。


俺  「ごめん!トイレ行ってもいい?」


Mちゃん 「えー!?早く帰ってきてよ?」


俺  「急ぐよ!」


俺は部屋を出てトイレにはいかず、

職員に聞いてみた。


俺  「Mちゃんてなんで特別なんですか?なんか病気とか?」


職員 「あー病気で長くは生きられないんですよね。子供も産めないし」


あっさり回答する職員に困惑する。

子供が産めるかどうかなんて関係ないだろ。

まだ子供だぞ?


俺  「・・・わかりました。ありがとうございます」


俺はすぐに部屋に戻った。


Mちゃん 「おかえり!何して遊ぶ!?」


俺は何の病気かは分からないから、なるべく運動しないような遊びを考えた。

プレイルームからこっそり持ってきたトランプを取り出す。


Mちゃん 「なにこれ?」


俺  「トランプっていってね?このカードで色んなことができるんだよ?」


Mちゃん 「教えて教えて!」


俺は神経衰弱を教えた。これならちょうどいいだろう。


Mちゃん 「やった!また勝ったー!お兄ちゃん弱いね!!」


俺  「Mちゃんが強すぎるんだよ!これなら世界で一番になれるよ!」


Mちゃん 「それは無理かな!だって部屋から出られないもん!」


俺  「うーん。分からないよ?未来は何が起こるかわからないからね?

    それにこの部屋に鍵なんかかかってないよ?

    ぜーんぶMちゃん次第ってこと!」


Mちゃん 「わかるよ!Mはすぐ死んじゃうし!」


なぜ7歳の子がこんなにも明るくそんなことを言えるんだろう・・・

受け入れることができるんだろう・・・


そう思いながら身体は勝手に動いていた。


Mちゃん 「!?」


俺はMちゃんを抱きしめた。

抱きしめてわかった。

とても細い身体で抱きしめるだけで折れてしまいそうだった。


俺  「大丈夫。大丈夫だよ。」


なんの根拠もない無責任な言葉しか言えなかった。


Mちゃん 「ありがとう。あったかいね!」


俺  「そう?俺暑がりだからね!身体がすぐ熱くなっちゃうのw」


Mちゃん 「ううん!なんかMの胸の辺りがあったかい!

      抱きしめられたことなんて1回もなかったから。」


心が痛む。そして涙がこぼれた。

そうだ、ここは児童施設だもんな。


俺はそのままMちゃんを抱き上げた。


Mちゃん 「うわ!」


俺  「じゃあこれも初めてだろ?」


Mちゃん 「たかーい!!!」


そして俺はMちゃんを持ち上げたまま、くるくる回ったり、

走り回ったり、飛行機をやったり、肩車をした。


親がやりそうな簡単な遊びを思いつく限り。


Mちゃん 「キャー!!!!」


楽しそうなMちゃんを見て嬉しくなった。

時間はあっという間に過ぎてもうすぐお別れの時間だった。


Mちゃん 「すっごい楽しかった!ありがとお兄ちゃん!」


俺  「それはよかった!まだ時間はあるけどやり残したことは?」


Mちゃん 「ご飯が食べたい!」


俺  「ご飯かぁ!その時間にはもう帰ってるから一緒には食べられないな・・」


Mちゃん 「えー。お兄ちゃんと一緒なら普通のご飯が食べられると思ったのに・・・」


俺  「普通のご飯?」


Mちゃん 「うん。お米が食べてみたいの!」


俺  「食べたことないの?」


Mちゃん 「野菜ばっかり!だってMはこの村ではいらない子ですぐ死んじゃうから

      もったいないんだって!」


俺  「・・・」


いくらなんでもそんな事って許されるのか?なんなんだよそれ・・・


職員が部屋に入ってくる。


職員 「もう時間です!ありがとうございました!」


俺  「あ、はい・・・」


職員 「ほら、お礼しな?あんたでもできることはあるでしょ?」


Mちゃん 「はい!ありがとお兄ちゃん!私は子供だしこれしかできないけど!」


そういって俺の唇にチューをする。


Mちゃん 「Mの最初で最後のチューです!」


俺  「・・・・」


狂ってる。なんなんだよこの村。

この子への待遇も。

腹が立ってしょうがない。


Mちゃん 「・・・怒ってるの?下手くそでごめんね?」


俺  「あ、いや全然怒ってないよ!ありがとね!!」


そう言って頭をなでて部屋を出た。


男友達 「どうした・・・?」


俺  「え?」


気づくと子供服屋さんの前に俺は立っていた。


俺  「あーごめん!」


俺  「(Mちゃんに服を買ってあげたら喜ぶだろうか)」


財布を開くと1円も入っていなかった・・・

それにあんな施設じゃ服を渡しても没収されそうな気もする。


何かしてあげられることはないだろうか。

少しでも助けたい。

俺は感情があふれ大声で泣きながら崩れ落ちた。


泣き始めて何分経っただろう。


男友達 「おいってば!!!」


俺  「?」


今度は宿の食堂にいる。


男友達 「お前さっきから変だぞ?」


俺  「あーごめんごめん。なんて?」


男友達 「川下りが凄かったんだって!!なんかこの村って女しかいないから

     男が必要だし男の子を産むことが全員のやるべきことらしいんだよ!」


俺  「・・・は?」


男友達 「でも生まれるのは女の子ばっかりらしくてさ!すげーよな!」


俺  「・・・」


男友達 「まぁ残りたいのは山々なんだけど、流石に無理じゃん?

     だからとりあえず色んな女とやりまくり!!!やばくね!?」


この瞬間に、頭の中で何かが切れる音がした。


俺  「・・・うるせぇよ!!!バカじゃねーの!?それの何がやばいんだよ!?

    やばいのはお前の頭だろーが!!!!」


男友達 「は、はぁ!?お前だって最初喜びまくってただろ!?

     何キレてんだよ!!!」


俺  「くそ気分悪い。飯なんか食う気にもならねーわ」


そうして席を立とうとしたときに食事に目がいった。

茶碗に盛られたご飯。おかずの鮭。味噌汁。


俺  「(こんなありふれたものをMちゃんは食べたことないんだよな・・・)」


俺  「・・・あ、そうか。これだ!!!」


男友達 「は!?」


俺は茶碗のお米でおにぎりを作った。

中には鮭をほぐして入れた。


俺  「ちょっといってくるわ!

    うまいこと言っといて!!」


男友達 「どういうことよ!?おい!!!」


俺はそのまま児童施設へと走った。

施設の明かりはついている。


俺  「あの、すみません!!!!」


職員が出てくる。


職員 「あら、さっきの修学旅行生じゃない。どうしたの?

    もしかして、わたしに・・・」


俺  「ちょっと忘れ物があって!!」


職員を無視してMちゃんの部屋に向かった。

そしてドアを開ける。


床にくまさんを抱きしめて寝転がるMちゃんがいた。


俺 「・・・Mちゃん?」


Mちゃん 「!?」


Mちゃんは驚いて振り返る。


Mちゃん 「お兄ちゃん!?なんで!?」


そういいながら目元を拭くMちゃん。

泣いていたんだろう。


やっぱりこんな子供が病気で死ぬこともわかってて、

不当な扱いも受けて、親もいない。


しかも、こんな広い部屋で1人で、

すべてを受け入れて過ごすことなんてできないだろう。


俺  「Mちゃんにプレゼント持ってきた!

    ちょっと崩れてるけどw」


俺はおにぎりを渡す。


Mちゃん 「なに?これ」


俺 「お米を握ってつくるおにぎりっていうんだよ?

   しかも中にはお魚も入ってる豪華なおにぎり!」


Mちゃん 「え!?いいの!?お兄ちゃんが作ったの!?」


俺  「そうだよ!ほら、食べてみて!」


Mちゃんは恐る恐るおにぎりを口に運ぶ。


Mちゃん 「ん~!!!!!!」


俺  「え!?大丈夫!?のどに詰まった!?」


急いで一緒に持ってきた水を出す。


Mちゃん 「おいしい!!!!!」


俺  「・・・ははっ。よかった・・・ゆっくり食べてね?」


Mちゃん 「んっ!!!んー!!!」


苦しそうなMちゃん。


俺 「ほら言わんこっちゃない!!!」


水を差しだす。


Mちゃん 「プハー!死ぬかと思った!!お米怖い!!!」


俺  「お米は関係ないでしょw」


そして食べ終わって満足そうなMちゃんは俺に言った。


Mちゃん 「お礼はまたチューでいい?」


胸が締め付けられる。


俺  「チューはお礼のためにするんじゃなくて、

    本当に好きな人とするものなんだよ?」


Mちゃん 「じゃあどうすればいいの?」


俺  「うーん、別にお礼はいらないんだけどなw」


Mちゃん 「それはだめ!」


俺  「なら、絶対元気になって!

    んで、10トンくらいのおにぎりを返しに来てもらうかな?」


Mちゃん 「10トンてなに?」


俺  「この部屋がおにぎりだけで埋まっちゃうくらいの量ってことだよ!」


Mちゃん 「えー!絶対できないよ!!せめて少しずつにしてよ!」


俺  「仕方ないなー。それでもいいよ!」


Mちゃん 「よーし頑張るぞ!!」


俺  「その意気だ!」


俺  「(もう十分すぎるほど頑張ってるよ)」


ふと気づくと同窓会のプロジェクターの前にいた。

後ろでは同級生たちが盛り上がっている。


またプロジェクターの方を見ると、村は映っているが

別のクラスの映像が流れている。


Mちゃんはやはり亡くなったんだろうか・・・


そんなことを考えていると、

またすぐに映像に引き込まれる。


今度は大人の姿のままだった。

辺りは暗く夜になっていた。


俺は迷わずMちゃんに会いに走った。

すると道中のお地蔵さんの前にMちゃんが立っていた。


俺  「Mちゃん!?何してるの?」


Mちゃん 「お兄ちゃんにおにぎりを届けているの!」


お地蔵さんの横には沢山の不格好なおにぎりが積まれている。

下のほうのおにぎりは腐っている。


その積み上げたおにぎりの一番上に

Mちゃんは新しいおにぎりを積む。


俺は涙があふれた。


なぜおにぎりをお返しに提案してしまったんだろう。

なんてバカなことを言ったんだ。


俺はMちゃんの手を取り目を見て話す。


俺 「違うよMちゃん!!俺は!Mちゃんに元気になってほしかったんだよ!

   ちゃんと生きてほしかったの!だからこのおにぎりは全部Mちゃんが食べてよくて! 

   それでMちゃんは元気に大きくなるんだよ!」


Mちゃん 「それでも、どうしてもお礼はしたかったから!

      お地蔵さんに届けてもらうようにお願いしてたの。

      ちゃんと届いてた?」


俺  「・・・うん。届いてたよ。」


Mちゃん 「良かった!」


その笑顔をみて、俺はMちゃんの手を引き村から出ようとする。

しかし、一歩も動かない。

大人の力でもびくともしない。


Mちゃん 「行かないよ?行けない。」


この村の何がそこまでさせるんだ!

俺は怒りを抑えられず児童施設へと向かった。


あの職員を見つけた。


俺  「おい!あんた!いい加減にしろよ!MちゃんにはMちゃんの人生があるだろ!

    村なんか知らねーよ!開放してやれよ!!」


職員 「?Mちゃんなら何年も前に亡くなりましたけど?」


俺  「・・・は?」


いや分かっていたはずだ。

容姿の変わってないMちゃん。

「行けない。」と言って動かない様子。


認めたくなかった。

そしていまMちゃんを縛っているのは俺なんだと思った。

亡くなってからもおにぎりを積み続けている。


急いでお地蔵さんの元に戻ると

Mちゃんがまたおにぎりを積んでいる。


俺は泣きながらそれを止めた。


俺  「もう大丈夫!!!大丈夫だから!!!10トン食べたから!

    これからは好きなだけ自分で食べていいんだよ!!!!」


Mちゃん 「ほんと?よかった!・・・おいしかった?」


俺  「うん・・・すごく美味しかったよ。世界一美味しかった。」


Mちゃん 「やったー!・・・泣いてるの?」


俺  「・・・泣いてないよ?」


Mちゃんは俺の涙を拭いてチューをした。


Mちゃん 「チューは好きな人とするんだよね?

      やっとできた!」


俺  「・・・はは。それは困ったな」


Mちゃん 「おにぎりもたくさん食べるよ!」


俺  「うん。好きなだけね!」


Mちゃん 「じゃあね、お兄ちゃん」


俺  「じゃあ」


Mちゃんは消えていった。

田舎の夜空はとてもきれいだった。


そして、何もない暗闇の中で俺の泣き声だけが響いていた。


~~おはよう自分。

  そうだ、復職が決まったんだ。不安もある。少し泣いてすっきりしたかったのか。

  ただ、相変わらず性欲はあるのだろうな。

  

  あ、数日前のお米保存し忘れてる・・・腐ったな・・・捨てづらいな

  ちなみに中学の先生とは連絡が取れてご飯に行くことになった。

  少し楽しみが増えた。


起床

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