表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

Dream3 「不思議なガチャポンエリア」

Dream3

「不思議なガチャポンエリア」



■登場人物

・俺

・男性

・女性

・おじいさん

・おばあさん

・謎の男

俺は今とある建物の階段を一人で上っている。

恐らく、1階から2階へ。


なぜここに来たのか、なぜ2階を目指しているのかは分からないが、

明確な目的をもって目指していることは確かだ。


上りきった先はとても狭い商業スペースが広がっていた。


左側には男性用と女性用のお手洗いスペースがある。

真ん中には何も置かれていない開けたスペース。

これからテナントでも入るのだろうか。


でもこの狭さでは、駅の売店や屋台しか開くことはできないだろう。

それくらい奥行きが無かった。


そして右側にはガチャポンのエリアがあった。


ちなみに俺の世代ではガチャポンや、ガシャポン、ガチャガチャであったが、

今はカプセルトイと呼ばれるようだ。


お金を入れて、つまみを回すと『ガチャ』っと音がして、

下から小さなおもちゃの入ったカプセルが『ポンッ』と出てくる。


これはガチャポンだろ!なんだよ、カプセルトイって!

なんでも横文字でカッコよくすればいいと思いやがって!


そう思うが、こういう思考が増えて、

いずれ時代の波についていけなくなるのだろう。

そして老害と呼ばれていくのだろう。


あー怖い怖い。


しかも当時のガチャポンは100円、200円程度で回すことができたのに

今では400円や500円するものもある。

高くなったものだ。


まだまだ30代なのにこんなこと考えてたら

人生の先輩方に大人ぶるな、お前もまだ若いって怒られそうだな。


それはさておき、俺が用があるのはこのガチャポンエリアのようだ。

もちろんトイレに行くつもりもないし、何もないスペースを眺めに来たわけでもないからだ。


ガチャポンは縦に2つ積まれていて、それが壁に沿ってずらっと並んでいる。


一番奥まで行くと、電車や車のオモチャのガチャポンを見つけた。

息子が車が好きなんだよな。

そんなことを思いガチャポンをすることにした。


そして気づいた。

この奥にあるガチャポンのうち、上に設置されたガチャポンのいくつかは

商品ケースの鍵が開いている!


俺  「おいおい!チャンスかよ!!」


これなら息子の気に入る車だけを、手に入れることができる。

しかも無料で好きなだけ。


一応、自分のなかの良心と相談をした。


これは犯罪だ。

ちゃんと運任せでお金を入れてやるべきだ。


でも、誰もいないフロアだぞ?下のフロアが何なのか分からないが、人の気配もない。


悩んだ末に欲望に勝てなかった俺は、

お金を入れる箇所に100円だけ入れて息子の好きそうな車を何個か選び取った。

ついでに横のガチャポンから電車もいくつか手に入れた。


こんなことで手に入れたものでも

息子は喜んでくれるだろう。


その笑顔を想像するとほんのすこーしだけ胸が痛む。

でもまぁ、おもちゃはたくさんあったほうが楽しいしな。


そうして、家に帰ろうと後ろを向くと

次々とガチャポンエリアに入ってくる大人たちがいた。


全員浮かない顔をしている。

そして、子供のために来ていると直感でそう感じた。


俺  「あっぶねー」


そのまま帰ろうとしたが、

通り過ぎる男性にそっと教えた。


俺  「あの奥の4台、鍵かかってないんで好きなだけ商品持って帰れますよ?

    お子さんの好きなやつ選んであげてください」


男性 「本当ですか?ありがとうございます!」


男性は商品を吟味して電車を選んで下へ降りて行った。


次は女性が近づいていた。

その女性は泣きじゃくっている。


俺  「どうしたんですか?」


女性 「だってここに来ている間も息子は一人で下にいるんですよ!!!

    ずっと私を待ってるんです!!」


その女性の言葉で俺は1階のエリアを認識した。


葬儀場だ・・・

しかも複数人の葬儀がここで行われている。

大事故でもあったのだろうか。


俺  「そうですよね。だから会いに行ったときに少しでも息子さんが喜ぶように

    好きな商品を持って行ってください」


女性 「ありがとうございます!ありがとうございます!」


涙を抑えられない女性は俺に何度もお礼をした。


おれはどの立場でこんなことしてお礼言われてるんだろう。


でもこういう人たちが来る場所なのであれば、少しでもできることをしてあげたい。

そう思っている自分がいた。


ひっきりなしにくる男性や女性の話を1人ずつ丁寧に聞いて、

その子供の好きなものを、鍵の開いたガチャポンから提供していく。


これで少しでも子供のためになるのなら、

後で自分が責任を負うくらいどうでもよかった。


ふと前を見ると、ガチャポンエリアの入口におじいさんが立っている。


俺はすぐに駆け寄り、声をかけた。


俺  「どうしたんですか?お孫さんですか?何か欲しいものはありますか?」


おじいさん 「いや、オモチャはいらないんだ」


俺  「あ、そうなんですね。でもこのフロアにはオモチャ以外はなくて・・・」


そう言って振り返ると、先ほどまで何もなかったスペースに

2つだけ洋式のトイレが置かれており値段が書かれている。

家電量販店でよく見かけるような光景だ。


俺  「(この建物にこれ需要あるか!?)」


俺  「トイレのお買い求めですか・・・?」


いつの間にかおれはこのフロアの店員の立ち振る舞いであった。


おじいさん 「いや、それもいらないんだ」


俺  「?・・・ではどうなされましたか?」


おじいさん 「もうすぐ、わたしくらいの年齢のおばあさんが来ると思う。

       相手をしてやってくれないだろうか。」


俺  「えぇ。来てくださればもちろん対応いたします」


おじいさん 「ありがとう。」


そう言っておじいさんはガチャポンエリアの角に戻り、また立っていた。


俺  「(待ってるなら、自分で相手もできそうなもんだけどな)」


そう思いつつ、引き続きオモチャの提供を続けた。

そして、それと同時になぜか洋式トイレの機能説明までやる羽目になっていた。


俺  「実際に座っていただいても構いませんよ?

    毎日のことですし、座る高さや穴の大きさは非常に大事ですからね」


女性 「あ、ありがとうございます!

    へー!こんな感じかぁ!」


俺  「いかがですか?

   (この状況でトイレ選ぶ必要あるか?誰か身内が下で亡くなってるのに

    今後の自身のトイレ生活について考える必要あんのか!?)」


そう思ったが表には出さない。

その人の必要なものを提供するために。


しかし、大切な誰かを失っている事から満面の笑みでの対応をするわけにもいかない。

ほどよい明るさと思いやりを・・・


この仕事、難しいぞ!?


また、しばらくオモチャの提供をしていると、洋式トイレの方でざわざわし始めた。


急いで向かってみると、洋式トイレの便座のうえでタンクの方を向きながら、

和式トイレのようにしゃがみこんで用をたすポーズをしているおばあさんがいた。


直感で認知症を患っていると察した。

それと同時にさっきのおじいさんが話していた、おばあさんであるのだろうと感じた。

おじいさんが立っていた方を確認すると、もうおじいさんの姿はない。


俺  「・・・(最後の心残りだったんだろうな)」


俺はおばあさんに話しかける。


俺  「お客様、こちらのトイレはしゃがんで用を足す和式トイレではなくて、

    座ったまま用を足すことができる洋式トイレというものなんですよ?」


おばあさん 「あら、そうなんですか?」


そういいながら、ズボンを脱ぎだすおばあさん。


俺  「(まずいな、トイレまでは間に合わないし、することを止めることもできないだろう)」


俺  「ちょっと失礼しますね?」


俺はそう言っておばあさんを抱きかかえ、

洋式トイレに正しく座らせた。


俺  「こうやって座って用を足すんですよ?」


おばあさん 「あら、いいわねぇ。疲れなくて」


そのまま用を足すおばあさん。

俺はおばあさんの前にしゃがみこみ、トイレの説明をし続け、

用を足している姿を他の人から見えないようにした。


しかしながら、このトイレはあくまで展示品だ。

下水道に繋がっているわけもなく、トイレの横から尿が漏れ出していく。


それに気づく女性。


女性 「ちょっと!!本当にしてるじゃない!!!」


その声に周りもざわつき始める。


俺は特に観衆の声には耳を貸さず、

用が終わるのを待ち、流れ出た尿の処理をした。

綺麗に拭き掃除を終えた俺は観衆に向かって


俺 「おまえらはなんなんだ。

   トイレが横にある状況でここでしまっている姿を見て

   察することもできないのか?


   亡くなった後にわざわざ直接俺にお願いしに来た

   おじいさんの気持ちなんて一生理解できないだろうな!


   だって身内が亡くなって下であんた達を待っている状況で

   未来の自分の便器を考えるようなやつらだからな!!」


と口に出すことはできなかったが、心で叫んだ。

腹が立ってしょうがなかった。


女性 「どうしてくれるのよ!その便器!」


なんだよそのクレーム・・・

お前の便器じゃねーよ!!!誰も買ってないんだよ!!


でも正論を叩きつけ説教をしても意味がない。

この場合、どうするのが正解だ?


俺は営業モードに入った。


1、「公共施設でも知らない人が使うじゃないですかぁ」と説明する


これは論外だ。

家で使うんだから他人が使った便器は嫌だろう。

いくらお渡しする際に綺麗になっていても、利用されている事実は消えない。


2、大幅に値引きをする


もちろん手のひとつではある。

でも値引きがあっても買わないだろう。

どうせお金が発生するのであれば、

利用されていないトイレをほかの店で買えばいいのだから。


3、無料にする


これならどうだ?

無料だぞ!?


勿論十分に綺麗にすることを説明したうえで無料だ!

契約は取れるかもしれない!

ただ、店の売り上げには何一つならない・・。


くそ!どの選択をすべきだ・・・!?


答えに悩んでいるとシーンが切り替わり、

監視ルームに座る黒いフードを被った謎の男が現れる。

俺はその姿を俯瞰して見ている。


謎の男は監視カメラから俺がどう対応するか悩んでいる姿を見ている。


謎の男 「いいねぇ、悩め悩め!!

     値引きでも無料でもうちとしてはどちらでもいいぞ!?」


なにやら、楽しそうに俺をテストしているようだ。


謎の男 「この仕事は傷ついた人に寄り添う仕事だ!

     特に利益なんてなくてもいい・・・さぁどうする!?!?」


謎の男は高笑いをする。


~~おはよう自分。

  もう昼か・・・朝飯食ってから目眩やばくて昼寝してたのよね。

  なんとなく目眩はなくてすっきりした感あるけど、めちゃくちゃ腹が痛い。

  これは下すやつだわ・・・

  だからトイレが出てきたのか?


  てか、店員でもないのにあんなに一生懸命にトイレ売る必要もねーよな・・・

  しょうもな・・・



起床

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ