Dream12 「災害と恋」
Dream12
「災害と恋」
■登場人物
・俺
・S子
・その他
俺は2階建ての家に一人で住んでいた。
朝起きて、なんとなく外を眺めている。
自然豊かな風景が広がっている。
心が落ち着くような気がした。
俺 「今日も仕事か・・・」
そんな時だった。
―ガタガタ
俺 「地震!?」
最初は少しの揺れだったがどんどん大きくなっていく。
俺 「おいおい!!でかいぞ!!!」
俺は窓を開けて外を確認した。
男 「凄い揺れだぞ!!!」
女 「キャー!!!」
外もかなり騒がしい。
立っているのも困難なほどの揺れが続く。
俺は窓枠に何とかしがみつく。
―ギィーーー
そんな音が聞こえ家が傾いていく。
俺 「やばい!倒れる!!!!」
家がどんどんと傾いていく。
倒れていく先には少し高い丘があった。
俺 「(一か八か!!!!)」
俺はタイミングを見計らって、窓からその丘にジャンプした。
―ガラガラガラ!!!!!
家が崩れる。
俺 「・・・あっぶね」
俺は何とか成功し無事に倒壊に巻き込まれることはなかった。
そして次々と周りの家が崩れていく。
俺 「うわぁ・・・これはやばいな・・・」
そんな単純な言葉しか出てこなかった。
どうすることもできず、ひとまず崩壊した自分の家に行く。
俺 「これはもう駄目だな・・・」
跡形もなく崩れてしまった自宅。
もう元には戻らないだろう。
そう思っていると隣の家が騒がしい事に気づいた。
おばさん 「あんた達!早く家から離れた方がいいよ!!」
周りに人が集まり避難するように声をかけている。
家はリフォーム中だったのか
周りに鉄骨のようなものがあり傾いてはいるものの
何とか倒れずに済んでいる。
家主 「うちは大丈夫なんだわ!」
そんなのんきなことを言って家に入っていく。
2階を見上げると部屋の窓から不安そうな顔で女の子が顔を出していた。
俺 「(本当に大丈夫か?時間の問題だろ・・・)」
そして案の定、家は傾き始めた。
俺 「ほらみろ!!!」
おじさん 「崩れるぞ!!!離れろ!!!!」
周りが逃げだしていく。
家主も何とか玄関から逃げ出す。
俺 「んなこと言ったって!!!あの子が!!!」
女 「キャー!!!」
さっきの俺と同じように窓枠にしがみ付いている。
俺 「(俺と同じ状況ならなんとかできるか!?)」
女 「たすけてぇ!!!!!!」
俺 「こっち!!!!こっちに飛んできて!!!受け止めるから!!!」
俺は手を広げて彼女を受け止めることにした。
女 「え!?!?」
俺 「早く!!!!」
女の子は俺に向かってジャンプした。
受け止めたというよりクッションになったような形で俺も後ろに倒れこむ。
そしてすぐに彼女を抱いたまま横に転がった。
―ガシャーン!!!!
俺の真横には倒れた家があった。
俺 「死ぬかと思ったぁ・・・・」
女 「ありがとうございます!!!本当にありがとうございます!!!」
俺 「あ、いや全然!怪我は?」
女 「おかげさまで何ともないです!」
俺 「それはよかった」
女 「私S子っていうんですけど、良かったら名前を・・・」
俺 「”俺”だよ」
S子 「俺さん!ありがとうございます!」
俺 「もういいって!」
よく見ると同じ年ぐらいか少し年下くらいか?
俺 「これじゃ今日のバイトもなくなるかな?」
S子 「あ、私もバイトなくなるかも・・・」
俺とS子はバイト先に電話する。
俺はコンビニでバイトしていた。
店長 「うちは全然大丈夫だから!いつも通りこれそうなら来てよ!
今日は来れない人多いからさ!!」
俺 「・・・はい」
俺はS子ちゃんの方を確認する。
S子 「・・・バイト先潰れちゃいました・・・」
俺 「あー仕方ないよね・・・」
S子 「そっちはどうだったんですか?」
俺 「何ともないから出勤しろってさ・・・」
S子 「え、この地震で無事なんてすごいですね!?」
俺 「ほんとついてるんだか、ついてないんだか・・・」
S子 「働けるだけいいですよ!お金があれば暮らせますし!」
俺 「まぁ確かにね・・・・あっ!うちくる?」
S子 「え?」
俺 「なんか人手足りないらしいから歓迎してくれると思うよ?」
S子 「いいんですか?」
俺 「うん!いこいこ!ダメでも説得するから!」
そうして俺達はバイト先のコンビニに行った。
店長 「おー!きたか!待ってたよ!!」
俺 「やっぱ大変ですよね?」
店長 「そりゃそうだよ!!!・・・その子は?」
俺 「今日からうちで働けたりしないですかね?」
店長 「急だなぁ!みんな手が回ってないし誰も教えてあげられないよ?
俺くんだって復帰研修中だろう?」
そうだ。
俺はうつ病で長期で休んでいたため復帰研修をしてもらっているのだ。
俺 「僕がこの子に研修するのはどうですかね?」
店長 「え?」
俺 「一応復帰なんで仕事自体は覚えてますから!
教えることで復習にもなりますし!!」
店長 「うーん。確かになぁ・・・・それならいいか!」
S子 「ありがとうございます!!」
店長 「じゃあよろしくね?えっと・・・」
S子 「S子です!よろしくお願いいたします!」
店長 「S子ちゃんね!じゃあ俺くん頼んだよ?」
俺 「はい!ありがとうございます!」
S子 「俺さん、ありがとうございます!」
俺 「とりあえずよかったね!
じゃあ早速始めよっか!」
それから俺たちはペアで動きながら仕事をこなしていった。
他愛もない会話も増えS子ちゃんは2つ年下の女の子であることもわかった。
そして何日も一緒に働いていて気付いたことがある。
俺 「(この子めっちゃ仕事できるな・・・)」
S子 「いらっしゃいませー!」
レジにS子が立っているだけで店も明るくなり、
お客様の中でもアイドルのような存在になっていた。
俺 「(つーか普通にかわいいもんな・・・
俺置いてかれるんじゃね・・・?)」
気づくとバイト先の仲間もS子ちゃんに夢中で
俺だけ取り残されたような気分になっていた。
俺 「(暗い気持ちに負けるな!引っ張られるな!!)」
S子 「俺くん大丈夫ですか?」
俺 「え?あぁ大丈夫、大丈夫!!」
S子 「ならいいんですけど・・・
暗い顔してたんで・・・」
俺 「全然平気だよ!」
S子 「俺くんには感謝してるんです!命の恩人で働く場所まで!
だからなんかあったら言ってくださいね!何でもします!」
俺 「はは、ありがとうね」
S子ちゃんだけは俺のことをずっと気にかけてくれている。
本当に優しい子なんだな。
S子 「あの・・・よかったらなんですけど」
俺 「ん?」
S子 「今度の休みの日、デートしません?」
俺 「デート!?」
遊びにじゃなくてデートって言ったよな!?
S子 「ダメですか?」
俺 「いや全然大丈夫だけど!!俺でいいの?」
S子 「当たり前じゃないですか!私から誘ってるんですから!」
俺 「そっか、じゃあお願いします!」
S子 「やったー!楽しみにしてますね!」
そう言って仕事に戻るS子。
俺 「(デートなんて何年ぶりだろうか・・・)」
そう考えながら楽しみな気持ちとドキドキが止まらない。
そうして迎えた当日。
2人でショッピングモールに来た。
S子 「なんかいいですね!ワクワクしてきました!」
俺 「そうだね!(俺はドキドキしてますけど)」
すると1階の大広場でなにやらイベントが開催されていて
沢山の人が集まっていた。
S子 「なんですかね?行ってみましょう!!」
そう言って俺の腕を引っ張て行く。
俺 「お、おう!わかった」
S子 「愛のゲームイベント?」
俺 「クリアできれば相性抜群?」
周りを見るとカップルらしき男女で溢れかえっている。
なんとなく自分たちもそう見えているんだろうかと気になってしまう。
S子 「やりましょう!!」
俺 「え?」
S子 「楽しそうじゃないですか!」
俺 「いいけど、どんな内容なんだろ?」
目の前で実際にやっているカップルを見てみる。
大砲のようなものからランダムに射出されるフリスビーや
ロケットの形をしたぬいぐるみをキャッチしようとしている。
S子 「なるほど!出てきたのをキャッチするだけですね!」
俺 「そうみたいだね!」
S子 「じゃあ簡単じゃないですか!俺くんは私のことだってキャッチしたんですから!」
俺 「あれはキャッチというかクッションになったというかw」
S子 「私も運動神経には自信あるんで!頑張りましょう!」
そうして列に並ぶ俺達。
並んでいる間に詳細なルールが分かってきた。
レベルは3まで用意されており、全てのレベルで10個中5個取れればクリア
ゲーム開始前には大砲の横にセットされている大型の扇風機を
自分たちで風量と向きを決めてスタートする。
俺 「なるほどね。意外と扇風機大事だな」
S子 「じゃあ任せます!」
俺 「まじで!?」
S子 「頼みました!」
俺 「責任重大だなw」
スタッフ 「次のお二人どーぞー!」
俺たちの番が来た。
スタッフ 「では扇風機をセットしてください!!」
俺 「(さてどうするべきか・・・)」
俺たちの前の組はどれもレベル2で失敗しているから最後が何かわからない
でもなにが飛んで来ようと上向きにはした方がいいだろう。
ぬいぐるみがあるから弱すぎるのも駄目だけど、フリスビーもあるから強すぎも駄目。
俺は上向きで中くらいの風量にセットした。
そして、2人で大砲の前に立つ。
S子 「頑張りましょうね!私前に行きます!」
俺 「頑張ろう!!了解!」
やる気満々なS子ちゃんがシンプルに可愛かった。
レベル1
まずはロケット型のぬいぐるみだ。
―ボンッ!
前にいるS子ちゃんが難なくキャッチする。
S子 「やった!1個目!」
―ボンッ!
S子 「はい2個目~!」
―ボンッ!
S子 「3個目~♪」
俺 「(え・・・俺いる?)」
―ボンッ!
S子 「4個~!」
―ボンッ!
S子 「ラスト―!」
スタッフ 「レベル1クリア―!」
S子 「やりましたね!!」
俺 「いや、俺なんもしてない・・・」
S子 「それは全部前に来たんで!」
俺 「そっか・・・ナイスだったよ!」
スタッフ 「レベル2~!」
―シュッ!
S子 「俺くん!!」
俺の方にフリスビーが飛んでくる!
俺 「おっけ!!」
フリスビーは俺をすり抜けて後ろへ行った。
S子 「ドンマイです!次来ますよ!!」
―シュッ!
俺 「(また俺か!!!)」
今度は何とかキャッチをする。
S子 「ナイスです!!!」
俺 「おう!」
その後もS子ちゃんの活躍もあり何とかレベル2をクリアした。
スタッフ 「レベル2クリア~!!本日初です!!!」
会場も盛り上がる。
恥ずかしさとプレッシャーが押し寄せてくる。
S子 「ラスト!頑張りましょうね!!!」
俺 「う、うん!!」
S子ちゃんにはプレッシャーがないのだろうか・・・
スタッフ 「レベル3~!!」
―ポンっ!
俺 「ん!?封筒!?」
勢いよく風に乗ってヒラヒラとランダムな動きで床に落ちていった。
S子 「うわー!ラブレターだ!!」
よく見るとハートのシールの貼られた便箋だ。
俺 「これ難しいぞ!?」
―ポンっ!
S子 「・・・・よし!!!」
S子ちゃんがゲットした。
俺 「凄いよ!!」
―ポンっ!
俺 「!?」
なんと2枚発射された
S子 「えーずるい!!」
そう言いながらも1枚ゲットするS子ちゃん
俺 「良く取れるな!」
S子 「愛のゲームですからね!!クリアしましょう!!」
俺 「(照れるぞ、おい!)」
―ポンっ!
俺 「3枚!?」
しかも俺の方に飛んでくる。
どれを狙えばいいんだ?
1枚はS子ちゃんの方に向かっていく。
俺は1枚に絞ったが取れなかった。
S子ちゃんも取れなかったらしい。
俺 「これ次も3枚ならラストチャンスだぞ!?」
S子 「絶対取りましょう!!!」
―ポンっ!
やはり3枚だ。
風に乗って飛んできたが、急速に落下していく3枚。
S子 「1枚取ります!!」
俺 「いや!大丈夫!!」
なんと3枚がほぼ同じ場所にまとまった状態だった。
2人で行けばぶつかる。
俺は手前の1枚を左手で何とかつかむ。
俺 「(あと2枚!!!)」
もう床に落ちかけている。
俺は飛び込んだ。
俺 「よいしょー!!!」
そして飛び込んだ右手には
2枚握られていた。
俺 「え、まじ?」
S子 「すごーい!!!!」
そう言ってハイタッチしに来るS子ちゃん
俺 「やったね!!!」
スタッフ 「全てのレベルクリアで~す!!!」
スタッフ 「お二人はもちろんカップルですか?」
変なインタビューが始まる。
俺 「あ、いえ違います」
スタッフ 「あら?友人ですか?」
S子 「今はまだそうです!」
スタッフ 「なるほど~。・・・どうするんですか?」
ニヤニヤしながら俺にマイクを向けてくるスタッフ。
俺は恥ずかしさで爆発しそうだったが
勇気を出してS子ちゃんを見た。
流石のS子ちゃんも察して恥ずかしそうにしている。
俺 「えーと・・・俺と、・・・付き合ってくれませんか・・・?」
会場が盛り上がる
S子 「・・・もちろんです!!!!」
そう言って抱きついてくるS子ちゃん
今度は倒れずにしっかり受け止めた。
スタッフ 「素晴らしいです!!まさに愛のゲームでした!!!
おめでとうございます!!!!2人に拍手~!!!!」
会場が拍手でいっぱいになる。
そして別のスタッフに誘導されて
背景に大きなハートが描かれた場所で記念撮影をすることになった。
俺 「そういえば、2人で写真撮るの初めてだね!」
S子 「そうですね!これからはいっぱい撮りましょうね!」
俺 「そうだね!」
―カシャ
~~おはよう自分。
会社を早退した日から、動くと脈拍と同時に
身体に一瞬電気が走るような目眩が起きるようになった。
運転しようにも左右確認だけで目眩がしてフラフラしてしまう。
また俺は会社に行けなくなった。
悔しい・・・・
いつになったら良くなるのだろうか。
家が壊れたのも自分が理想としていた復帰が崩れたからだろうか。
それにしてもショッピングモールがよく出てくる。
何か意味はあるのだろうか。
まずはこの目眩を治さないと何も始まらない。
運動は控えてたくさん寝ることにする。
起床




