第56話 本来のテイクにも敬意を払って
「テイク、久しぶりだね」「エバレイの姐さん!」
「ようテイク、元気そうだな」「カソンの親分もっ!!」
「今日は特別にアタシたち、テイクに会いに来たんだよ?」
最近忙しくて孤児院にあまり行けなかった、
というか孤児院の子を定期的にハゲモンクが遠足に連れてくるもんだから、
教会での労働に縛られている元・育ての親とは本当に久々の再会である、あっ、涙でちゃう。
(これは本来の、この身体の持ち主、テイクの感情だ)
俺の、土間幸一としてのドM感情剥き出しの時は大人しくしているが、
今でもたまーにテイク坊やの人格というか存在が溢れてくることがある、
それでも気分程度だったのだが、エバレイ姐さんに抱きついている俺いや僕は間違いなくテイクだ。
「改めて礼を言うよ、テイクのおかげで命を拾って貰ってさ」
「俺だってあれから少しは改心したんだぜ、孤児院の子にも懐かれてさ」
「エバレイ……姐さん……カソン……親分……うわああああああああああああん!!!」
うんうん、いくらでも大泣きするが良い、
まだテイクとして幼い言動が出てくるのは、
きっとテイクがまだあの子供のままだからだろう。
(なので、こういう経験を踏まえれば少しは大人になってくれる、はず!)
さすがに15歳で『おいら』は勘弁して欲しい、
とはいえ、15歳が『いやね、昔、エンゲージプリ●セスっていうゲームがありましてね……』とか言うのも、
まあ元ネタわかる奴がこっちの世界に居ないから怒られないだろうけど、それにしてもアレは色々と酷かった。
「やはり特別に許可を得て連れて来て、良かったですな」
リーフ様もおそらく満足そうだ、
まあこのゲームでエバレイとカソンが幸せになるなんて、
普通じゃありえないが、このテイクの身体を乗っ取っている税金とでも思おう。
(何よりテイクが、全身が震える程に喜んでいる)
疲れて眠るまでこのままで良いか、
と思ったら新顔2人がご挨拶に来たっぽい。
「失礼、テイクの保護を共同でしているシヴァールと申す」
あっ、対外的にはそうなっているのか、
とんでもない悪女予定だったガタイのでかいお姉様が、
今やすっかり僕テイクの保護者か、なんだかむずむずするな。
(現にくすぐり攻めをされた事もありましてね)
若い身体で良かった、
前世だったら腹筋がつっていた所だったよ、
そしてもう1人は当然、これまた酷い悪女になる予定だった……
「テイク様のお世話係デティです、育ての親と聞いてご挨拶に」
「可愛いメイド服ね、娘に欲しいくらいだわ、ねえ、アナタ?」
「そうだなエバレイ、ひょっとしてテイクのお嫁さん候補か?」
いや候補どころじゃないんですが!
すでに4人婚約者が居るなんて言えない、
まあこのあたり、いつかは言わないといけないんだろうけど。
「……照れる」
デティちゃんの反応を見たいが、
姐さんの胸にしがみついたままのテイクじゃ、
顔を外せないな、そして続いて聞こえてきた声は……
「お久しぶりです」「スティラ、最近のテイクはどうだい?」
「はい、それはもう大活躍で、将来も本当に楽しみですわ、ねえマリーヌ」
「テイクくんは私たちが、責任をもって、ちゃんとした勇者にします」「嬉しいねえ」
エバレイ姐さんの母性的な声に、
あきらかに甘えるテイク、これは俺の動きじゃないな、
俺がスティラさん達に甘える時はもっとこう、ねちっこいというかなんというか。
(今のテイクは純粋に、母親に甘えている)
いや本当に助命して良かった、
一緒にカソンも救わないといけないのがずっと心に引っかかっていたが、
今のこの状況を感じるに、結果としてこれで良かったんだと思う、何よりテイクの希望だ。
「それでエバレイ様、私たちはしばらく、また遠征に出なくてはいけません」
「大変らしいね」「俺たちで力になる事があれば」「カソン様ご夫婦は引き続き、教会を」
「私はどうしましょうかの」「リーフ様に関しては総指揮官のサイモン様に」「うむ、わかった」
えっエリオ王子来ないのかよ、
まあ国政とか色々で忙しいだろうけど、
主人公不在の遠征……外伝ストーリーだから良いのか。
(しかし、よりにもよってあのモッコス将軍かよ)
本来は死ぬ予定だったキャラを連れて行くと、
辻褄合わせで殺されやしないかと心配になってくる、
同じく死ぬ予定が砂漠の国に嫁いだ、聖女テラーさんは相変わらず幸せにやってるらしいが。
(砂漠の国王が『骨抜き王』と呼ばれる程らしい)
まあ俺も大して変わらないけどねっ!!
「そういうことでエバレイ様、今夜はテイクちゃんとお食事を」
「こっちで食べて良いのかい?」「はい、不●家レストランでご馳走します」
「まあアンタ」「おう、腹いっぱい食べさせて貰うぜ」「だそうよテイク」「……ぷはぁ、おいら、頬張る!!」
僕テイクがエバレイ姐さんの胸から離れると……
「エバレイママー!!」
あっ、今度は交代でリリアンちゃんが!
スティラさんに連れて来られるまでの母親代わりだったのかな、
甘える様子にスティラさんが微笑ましそうにしている、さて、おいらも涙を拭おう。
(デティちゃんが黙ってタオルをくれた)
拭きながら思う、
今日くらいはこの身体、
完全にテイクくんに預けて良いかなと。
『……ありがとう』
そう頭の中で、
声が響いたのであった。
(いえいえ、夜は毎晩、刺激が強すぎてごめんね!!!)




