第34話 テイク十五歳、お誕生日会はバーターから
「「「テイクちゃん(くん)、お誕生日おめでとーー!!!」」」
コンビニで買ったクラッカーがパーンパーンパーンと鳴らされる!
はいんだけど豪華海鮮バーベキューに紙テープが乗っかっちゃって……
俺はそれを取りながらみんなに感謝する。
「ありがとう、おいら、嬉しいよ!」
今日はテイク十五歳の誕生日、
お誕生会は懐かしのCM『ロブスターたべたーーーい!』と
ガキが自転車に乗って猛烈に突っ込んでくるVTRが店内に流れる、某高級ファミレスで行われている。
(もちろん例のアジト内だよ!)
いやファミレスは和洋中ハワイアンと色々取り揃えたが、
お誕生会って考えるとステーキだけじゃなく華やかな海鮮がいっぱいのこちらでですねえ、
個人的に外すパーツがやたらめったらある料理を誕生日だからって、みんなに取って貰おうという魂胆です、はい。
「はいテイクちゃん、貝は全部外しましたよ~」
「テイクくん、エビも全部剥いておいたからね」
「うん、いただきます! ……おいら、うれしくっておいしい!!」
四人掛けテーブル、
狐獣人な店員が次々と料理の皿を上げ下げしてくれる中、
えっ何で狐獣人かって? 実は宇宙戦闘機を操るパイロット、ってこれ以上はいけない!!
(テーブルに目を戻して、っと)
まず俺の隣で地味にエビの殻を剥くマシーンと化すマリーヌちゃん、
一生を捧げる勢いで世話していた弟を雪国の姫に寝取られてしまい、
すっかりお世話の対象が俺こと、いやおいらことテイクに向けられてしなった。
「マリーヌちゃんも、あーーん」
「んっ……ほんとここの味付け、濃くって美味しい」
「ポイントがっつり持っていかれるからね!」
フルーツジュースも濃いんだよなあ、
そして正面に座るのは俺の口へ料理を運ぶ体勢のまま待っていた、
悪女オブ悪女、この世界でナンバーワン悪女予定だったスティラ様、のはずが……
「はいテイクちゃん、あーーーん」
「んーーー……おいしい、オイスターおーーいしーーー!」
「ふふ、口移ししてあげようかしら」
最近はお姉ちゃん的な新密度が降り切れ過ぎて、
こうやって背筋が寒くなるレベルの発言をする事がまれによくある、
隙あらば抱きついてスリスリしてくるし……本当、声もまさに永遠のお姉ちゃんだ。
(とまあ、隣と正面は良いのですよ、問題は……)
斜向かいに座る十一歳の少女、
孤児院からたったひとり代表で来たリリアンちゃんが、
スモークサーモンを美味しそうにぴちゃぴちゃ食べている。
(服はコンビニの安いやつだけど清潔だよ!)
いやね孤児院に服の差し入れとなると予算的、
ポイント的に……とはいえここの高級ファミレスで、
みんなのお土産に買うチーズクラッカーはめちゃ高いけど、量も必要だし。
「……テイクちゃん」
「はいスティラお姉ちゃんさん」
「んもう、大人の尻尾が出たわね」
そう、たまにテイクのキャラを逸脱して、
中の俺こと土間幸一の口調が出たりすると、
こうやって突っ込まれたりする、お互いもう慣れたけれども。
「実はテイクちゃんに相談があるの」
「添い寝をもっとハードにしてくれるとか?」
「ふふふ、それもいいわね、じゃなくって……」
隣りの少女、リリアンちゃんの方を向く。
「彼女をウチで、私の方で引き取りたいの」
「えっ、なんでまた」
「孤児院に居る子達、全員を今までチェックした結果、彼女が一番戦力になるからよ」
そんな事してたんだ!
まあ、戦闘訓練みたなのはしてたな、
孤児院から卒業しても冒険者でも衛兵にでもなれるようにって。
(そのあたりは前々からリーフ様、例のハゲもやってたんだけどね)
ゲームでは速攻役立たずハゲも、
今や超武闘派で新たな山賊二十人を一人で倒せる猛者である。
「ええっと、リリアンちゃんって、魔法使い?」
「今は僧侶だけど将来的には聖女、さらに別のクラスに」
「あっそうか、マリーヌちゃんの弟を寝取った聖女スノ様みたいになるんだね」「……言い方」
あっ、泣きそうになるからこれ以上はやめておこう。
「えっとじゃあ、うちのパーティーに入れたいと」
「そうなるわね、ここでならすぐ育つでしょう? 部屋は私の部屋を使わせるし」
「……良いですけど、それだとおいらがスティラお姉ちゃんさんの部屋へ行けない……」
俺の頬をやさしく撫でるスティラさん。
「何言っているのよ、私がテイクちゃんの部屋へ行くわよ?」
「そ、そうですよね、おいら、嬉しい」
「テイクくん、順番だと今夜は」「う、うん、マリーヌちゃんとだよねっ」
えっ、もうそういうことを、どうこうしてるのかって?
まあ、ご想像にお任せします、はい、いやいやいや悪女ハーレムどこ行った!!
(と実況なら反応を見たい所なんだけどなぁ)
あいかわらずPCは入手してもリアルタイム配信は見れないんですよ、
過去の、俺が死ぬ? までのは見れた、昨夜も『ぴかてふ先生』の配信アーカイブ見てたし。
「だからテイクちゃん、ね、いいでしょ?」
「……それでリリアンちゃんは、いいの?」
「うん……スティラママが、テイクちゃんが良いって言ったら……って」
あれ?
この声、
リリアンちゃんの声って、確か……?!
「スティラお姉ちゃん」「なあに?」
「リリアンちゃん」「……はい」
「二人、親子みたいな、母と子みたいな声してるね……あっ!!」
こ、こっ、これはああああああ!!!
(中の人の声、これ実の母子だあああああ!!!)
まさかのバーターである。
「うん、いいよ、引き取ろう!」
「わあ! テイクちゃん、ありがとう」
「……テイクお兄ちゃんって、呼んでも……いい?!」
うん、事務所大喜びだね! ってどこの?!
「バースデーケーキをお持ちいたしました」
「あっ、店員さんありがとう!!」
とまあこんな感じで十五歳になったおいらなんだけども、
ここからが悪女ハントの後半戦なんだよなあ……。
(食事が終わったら、整理しようっと)