第33話 悪女との生活は思ってたのと違う!
「さあテイクちゃん、苺だいふくよ、あーん」
「あ、あーん……んぐんぐ、美味しい」
「テイクくん、おっきいプリンも食べさせてあげるね」
悪女ルームとして期待していたスティラさんの寝室は、
すっかり大人のOLが普通に過ごす素敵なお部屋になっていた、
トレンディドラマなんかで三十歳手前の女性が住んでるような感じ、て表現古いな。
(普通におしゃれ雑誌とか買って読んでるんだもんなぁ)
そしてコンビニで買ったお菓子を両脇から食べさせてくれる、
スティラさんとマリーヌちゃん、いや、ちゃんって言えって強要されてですね、
色々と甘々な空間になっているのには理由があるのですよ!
(まずは順を追って説明しよう)
まず最初にしたのは機動力の確保だ、
スティラさんのリハビリやマリーヌちゃんのお仕事のため、
孤児院でしばらく預けていたのだが、やはり会いたいし向こうも恋しい、この修行場が。
(そこでやりましたよ、クラスチェンジ!)
ラスボスを倒してゲームクリアすると、
二週目以降は更に別のクラスにチェンジできるのです!
なので俺は、いやおいらテイクはまず騎馬戦士となりました。
(機動力が前からさらに足されて50になったよ!)
そう、まだこの時は。
えっペガサス? だーかーらー、高所恐怖症なんだってば!
「テイクちゃん何を考えてるの? 次はチョコレートドリンクで良いわよね?」
「あっはいスティラ、お、お……」「スティラお姉ちゃんでしょ?」「はいぃ」
「プリン食べきってないよ、はいテイクくん、あーん」「あーーん……んぐんぐ、おいちい」
(回想に戻ろう)
で、更にポイントを稼いで上位の聖騎士になったうえ、
アイテム盛り盛りで機動力255とかいう化け物に、これもうワープで良くね?
いやワープの魔法書はある(クリア後交換できるようになった)がマップ内限定だし。
(一方、マリーヌちゃんはペガサスウィザードにクラスチェンジしたよ!)
いやそのペガサスどこから出てきたって感じになった、
なんでも自分から会いたくなったら弟の所へ行くためらしいが、
機動力をこちらも同じく255にした結果、クリネくんから直接、
「あんまり邪魔しに来ないでよ」
と言われヘコんだらしい、
それがきっかけで今度は僕、
いや、おいらテイクの世話をしたがるようになった。
(その結果がこの甘々お姉ちゃんである)
スティラさんもスティラさんで僕が孤児院まで送り迎えするようになり、
記憶が消された分の、人としての一般常識をあのハゲもとい僧侶おったんもといリーフ様から教わり、
悪女になるどころか孤児院の子供達みんなに好かれる聖人君子になってしまいましたとさ。
(で、一番お世話をしたい相手が僕だとか、確かに嬉しいけど、でも、でも……!!)
「思ってたのと、ちがーーーう!!」
つい口に出して叫ぶ俺テイクに焦るふたり。
「テイクちゃんどうしたの、一緒にお風呂入る?」
「テイクくん、何かして欲しかったら言って、なんでもしてあげる」
「おいら、おいら……あっそうだ、トイレに行ってくる」
逃げるようにしてスティラさんの部屋を出る、
ロビーから見える扉は大浴場にコンビニにファミレスに、
図書館にゲームセンターに……ほんと、立川駅前の商業施設かよ。
(ふう、住むには贅沢過ぎる場所だ……)
ちなみにお店の従業員は、
例のポイント交換受付に居るような人型の人形です、
さすがにゲームの時代に会わせてか、ファミレスに猫型ロボット(狸じゃないよ)は居なかった。
(とりあえずは、あとふたりだな……)
もうすぐやってくる本来のゲーム開始ストーリーの時間、
ラスボスを倒したからと言って何も起きない訳では無さそうだ、
だからこそ、そのタイミングに合わせて残りの悪女ふたりを手に入れよう。
(ハーレムは四人集まってこそだって、昔、何かで聞いたからね!)
今のふたりも十分に魅力的、
親愛度もSになっているけれども、
俺がここへ来てからの目標『悪女ハーレム』のためにも……!!
(この世界を、もっともっと、攻略してやるー!)
トイレから出ると、待っていたふたり。
「さあテイクちゃん、お風呂で身体を洗ってあげる、上がったら爪を切ってあげるわ」
「テイクくん、お風呂で水魔法試してみるから見てよ、そして一緒に遊ぼう? ねっ?」
「お、おいら、おいら……おいらはーーー!!」「テイクちゃん♪」「テイクくん?」
(悪女でハーレムを作りたいんだ、悪女で、あ・く・じょ・でーーー!!)
なぜか甘々お姉ちゃんハーレムになりつつある中、
果たして俺の望む『悪女ハーレム』への道は、どこにある?!
第二章へつづく。
このあと、登場キャラクター紹介をはさみます。