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第29話 歴史より早いラストバトル

「さあいよいよやって参りました戦いのワンダーランド、

 まずは機動力のある騎馬やドラゴンが城をぐるりと回って、

 鍵を開けまくり遠距離攻撃の敵や宝箱を我先に回収せんとする盗賊を……」


 とまあ俺が実況し始めるとさすがに迷惑そうな王子やドミニク姐さん、

 そういえばラストバトル直前には全員が一言ずつ台詞を言うんだっけ。


(ゲームの流れだと、そうしないと始まらないのかも)


「それではここで一人ずつ、覚悟を伝えて頂きましょう、

 はずはこのわたくし、少年テイクの恩人、ドラゴン四姉妹と、

 さらに緊急助っ人で入りましたマティスリア国のお姫様から!」


 姐さんが剣を城に向けた。


ドミニク「悪の芽は今のうちに断つ、覚悟しておけ」

レイラ「テイクちゃん、危なくなったらいつでも呼ぶのよ」

ミラール「テイク少年が導いてくれた決戦、結果で魅せるよ」

ファル「みんな、怪我したらすぐ私かスノちゃん、ううん、スノ様に」

スノ「あぁ神よ……誰一人欠けることなく、最後まで戦い抜けるよう、お護り下さい……」


 何気に信頼度の高い相手に言う台詞が出てきてびっくりするっていうか、

 なんだろう、なんとなくガキカッコの前に名前が出ている気がする、ゲーム的な。


テイク「さあ、続いてガルデーダス城から馳せ参じた王子御一行の決意をどうぞ!」


 うん、俺にも付いた、気がする。


エリオ「幸せな未来を……この手で掴む!」」

ジュリン「若と離れての作戦は辛いですが、すぐに合流しますので」

マクス「いよいよ最後だな、存分に暴れてやるよ!」

フォスト「この命……我が国、そしてエリオ王子に捧げましょう」

ゼッカ「なあに、俺は俺の仕事をする、ただそれだけさ」


 ゲームでもラストバトル前に言う台詞そのままだが、

 約一名、本当はゲームの進行上すぐ死ぬキャラが生き残っているから、

 何を喋るかと思ったら他のキャラの使い回しじゃねーか!


(生配信ならツッコミが入っていたな)


テイク「最後においらの、テイク軍のみんな! ひとことずつドーゾ」


 そんな軍あったっけ? とか言わないで!


クリネ「姉様、姉様のために、頑張るよ」

マリーヌ「生きた人間で魔法の実験、楽しみだわ」

リーフ「これ以上、犠牲を出さないために……やりますかのう」

テイク「おいら、この日のために強くなったよ! 見ててよ!」


 うん、テイクの台詞も、ハゲ僧侶もゲームと同じ、

 ついでに言うと本来は敵の姉妹もクリア後のお楽しみ、

 敵を味方に使えるモードで最終決戦に行った時の台詞をそのまま言ってくれている。


テイク「では皆よ、我々にとっての平和を、歓喜の瞬間をこの手で掴もう!」

全員「「「「「「「「「「「「「おーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

テイク「それでは、とつげきーーーーー!!!」


 こうして始まったラストバトル、

 遠距離攻撃の者がまず城の外周から、

 壁を挟んで内側の敵をちくちく攻撃しながら移動して行く。


(間に壁があるのにどうやって矢や魔法をあてるのかって? 窓があるんだよ!)


 ゲームでの謎が解けた瞬間である。

 てっきり公衆トイレの大きい方みたいに、

 壁の上部が開いているのかと勝手に思っていたよ……


「よし、おいらの軍と王子は中央突破、だいじょうぶ、まーかして!」


 まだ敵がダングルキア国単独で魔王と手を組んでいないとはいえ、

 やはり相手は強いのが湧く湧く、名無しのモブとしてはもったいないぐらいに。

 特にボス部屋へ通じる横の、魔女じゃない方の大魔導師は何とか味方にして持ち帰りたいくらいだ。


(かといって使い道がなあ、おそらく爺さんだし)


 最悪、ヤツが持っているアイテムだけでいいか。


ゼッカ「若ー! 裏は制圧しましたぜ」


 はっや!

 さすが機動力20、

 アイテムを使ったチート過ぎる。


(将来、強くした連中が敵にならなきゃ良いが)


 ゲームあるあるなだけあって怖いが、

 俺にはまだ皆に伝えていない切り札があるんだよ、

 ふっふっふ……と思っている間にぐんぐんと前へ前へ。


(やはり前衛の、弟クリネくんが頼もしい、あとは……)


マリーヌ「ストーミングサンダー!!」


 ポイント交換した高威力の魔法で敵を粉砕する悪女マリーヌ、

 いや悪女になる前に仲間にしたから言い方に語弊があるけど!

 最近はおいらテイクとの親愛度もDからCに上がり、いよいよである。


(この戦いが終わったら、正式に引き取るんだ……)


 弟が付いてきそうだけどねっ!


テイク「おっと、ここはおいらが前に出るよ!」

マリーヌ「あ、ありがとう、じゃあ補助するね」

リーフ「ふんっ! さあ道が開けましたぞ」


 こうして広大な城内マップをぐんぐん進み……


(ついにグナガンの、玉座へ繋がる通路だ!)


 奥には物々しい扉、

 左を窓から見ると全身黒いローブの魔道士、

 そして右を見たら……居た! ついに、ついにその姿を見ることが、出来た!


スティラ「ついにここまでやってきたわね、闇の炎で滅してあげるわ!!」


 このドスが聞いた完全な悪女声、

 うん、間違いない、この声は紛れもなく……


(元祖:永遠の17歳サマだああああああ!!!)


 まさに悪女声優オブザ悪女声優!

 この中の人の悪女役はほんっとに日本最高峰なのですよ、

 もうそれは声だけで男を殺せそうなレベルの、うん、ヨダレ出そう。


(そしてこのキャラクターデザイン! あぁ、呪い殺されてえ!!)


 俺のドス黒い欲望を実況でつらつらと述べたい所だが、

 今はそんなことをしている場合では無い、さくっと通り過ぎないと。


スティラ「きゃっ?! ちょっとアンタたち、どこから入り込んだのよ!!」


 本来なら凄く遠回りで手間をかけて入る悪女の間、

 機動力を生かしてドラゴン四姉妹がスティラを取り囲んでくれている、

 レベルアップとアイテムで魔法防御を最高にしていても、そこそこダメージを喰らう。


スノ「オールヒール!」


 回復薬の聖女姫も一緒に輸送されてて良かった、

 反対側の大魔導師も王子の手下がすでに取り囲んでいる。


ジュリン「若、こちらはまだ『高級くすりびん』が豊富にあるゆえご安心を」

エリオ「そうかわかった、では行くぞ!」


 こうして奥の扉を開くと……!!


グナガン「ぐぐぐ、我が企みはまだこれからというのに、なぜばれた!!」


(まだ魔王になっていないラスボス、きたああああああああ!!!!!)


 歴史より三年早いラストバトル、いよいよである。

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