第28話 ラスボスと魔女の関係
(……きちゃった)
王城の前で勢ぞろいする僕ら、
今は主人公エリオとドミニク姐さんが打ち合わせ中だ、
他のみんなも準備に余念が無い。
(ゲームだとキャラクター選別画面だなコレ、そして相手は……)
魔界に魂を売る事となるダングルキア国王グナガン、
まだ売る前だがあらゆる意味で殺せる条件はなんとか掻き集めた、
戦争なんてものはまあ、勝った方が正義なんですよ! 口には出せないけど。
「それにしても我々は、本当に強くなったな」
「アイテムいっぱい強奪できて、おいら、嬉しい!」
そう、ここへ来る直前のマップ、
ゲーム版の初代のみにあった『ただ全員通り過ぎるだけの章』で、
丁寧に恐ろしい数の敵を全て退治してしまった。
(ゲームと違って後ろから追ってくるかも知れないからね!)
おそらくだがゲーム版ではまだ育てきってないキャラを、
このマップでレベル上げしておけよっていう親切設定なんだろうが、
俺たち上位クラスしかもレベルMAXの精鋭十四名には、単なるアイテム稼ぎだった。
(ちゃんと武器も魔法も安い、凡庸ので済ませたよ!)
ただここに来て、
物凄くやっかいな展開が待っている。
おそらくそれの確認にエリオ王子とドミニクさんがやってきた。
「テイク、グナガンとその、魔女スティラについて改めて聞かせてくれ」
「あくまでもスティラを持ち帰りたいというのだなテイクは」
「うん、おいら、スティラを改心させて、ねんごろになる!!」
改めて他のみんなにも聞こえるように説明をする、
最終マップ、本来なら魔王の力を貰ったグナガンが奥に控え、
そこへ行くまでの通路の両脇に、壁を挟んで敵の魔道士が二体、待機している。
(左側が『大魔導師』名の無いモブ、と言うには強すぎるんだよな)
ダークネスストームの魔法書と、
その名も『蟲の王』とかいう杖を使って攻撃してくる。
(そして右側が、俺の待ち焦がれた魔女、悪女スティラだ)
範囲攻撃魔法『デスシャワー』『ポイズンマグマ』だけじゃなく、
遠距離回復の杖で対面の大魔導師のみならず、
ターン毎にラスボスであるグナガンの回復までする。
(そして倒すには、かなり遠回りして鍵をいつくも開けないと隣接できない)
この辺りは城外からなのだが、
まあそれは機動力のある者が回り込めば良い、
問題は倒した場合だ、うん、イージーモードだとこれは無いのだけれども……
(グナガンを倒すと、スティラが自分の命と引き換えに復活させてしまう)
ほんっと意地が悪いストーリーだ、
いや最後の最期だからそういう演出なんだろうが、
しかもハードモードだと先にスティラを倒してもその魂が復活させてしまう。
(じゃあどう倒すか? 倒さないんだよ!!)
スティラは殺したくない、
でもグナガンを殺すとスティラは命を投げ打つ、
ならばグナガンを生け捕りにしてしまえば良い、もしくは……
(グナガンを殺す前に、スティラの記憶を、消す!)
ただ、ゲームの世界だと奇跡的にスティラを眠らせる事が出来ても、
グナガンを倒すと普通に、まるで起きていたかのように魂を捧げる、
最新版(配信版)では一応、目が覚める台詞を前に入れられるのだが。
(なので、記憶が消えてても魂を捧げる可能性が残る)
これはどの段階でその契約を結んでいたかだ、
ひょっとしたらまだその魔法を習得していないという可能性もある、
何せゲーム開始の二年くらい前だからね、もちろんグナガンも弱いはず、ゲームよりもは。
「……という訳で、石化魔法なのですよ!」
その僕の言葉に頷くマリーヌとリーフ。
「……本当に、効くの?」
「言われた以上は、やってみせますが」
「不安がらないで! 多分、大丈夫! 多分ね!」
そう、ラスボスのグナガンは直接攻撃は主人公以外効かないが、
状態異常の魔法は低確率でかかる、1%~4%の確率で。
だから魔力と魔法成功率の高いふたりに、ストーンの状態異常をかけて貰う訳だ。
(その間にグナガンを捕縛、もしくはスティラの記憶を消してお持ち帰り、と)
この辺りはゲームとこの世界の差異がわからない、
だから最悪、グナガンを放っておいてスティラだけ連れ去る方法もある、
ただそれだとここを攻撃する建前が……まあ、なんとでも辻褄は合わせられるだろう。
「だって、強い方が正義なのだから!」
「……テイク、一応は正義のための力なのだからな」
「うん王子、今日はラーメン三銃士は連れてこないの?!」「何の話だ」
いや、この声の人は連れて来ないんだった、
あくまでも父親と料理で喧嘩する方の声だからね!
「そういえば自動販売機とやらのラーメンの味が恋しいな」
「ドミニクの姐さん……作戦が成功したら、ご馳走するよ!」
というかポイントでファミレスを作りたい。
「んぢゃ、いってみよー」
「待て待て、まずは最終勧告が先だ」
ゼッカさんの渋い声で言われちゃあ仕方ない。
(早くそのお姿を拝みたいな、最凶の魔女、スティラさまぁ!)
そして初見で、目で殺されたいっ!!
……という感じで待っていると、
書状を持って行ったウチのモブ兵士(居たんだ!)が血まみれで帰ってきた。
「よし、これで交渉は決裂だ」
「若、ではポジションに」
「ああ、テイクが作ってくれたこの図形の通りに着いてくれ」
さあ、さあさあさあ、
長かった待ちに待ったラストバトルの時、
いざ、実況スタートですよー!!
(って言う程、実況できる余裕あるかなぁ?)
「おいらに、おまかせー!!」