第26話 やはり主人公の力は借りるべき
「ほうほう、確かに敵が強くなってきたな」
俺が転移だか転生だかしたこのゲーム、
シンボリックウォーワールズの初代主人公が修行場で敵を倒し続けている。
「若、そろそろ休憩を」
「そうだな、こちらの果実は本当に美味しいからな」
そう言ってアジト内に入り、
ポイント交換で手に入れたふっかふかのタオルで汗を拭いてるエリオ王子、
お付きのジュリン、マクス、フォスト、さらにはイケボ初老の重戦士ゼッカも休む。
(一気に戦力が……でも、でも)
ここをバラした時のデメリットは単純にそう。
『ここを我が国の領土とする!!』
とか言い出されて取り上げられる事だ、
それは(旧)ペガサス四姉妹、現ドラゴン四姉妹にも言えた事だが、
こういう男共が相手だと俺の、テイクの『おねショタ大作戦』が通用しない。
(いや、俺の『おねショタ』は悪女のために使うんだ!)
ちなみに今日はその悪女のひとり、
マリーヌとその弟クリネはハゲ僧侶にドナドナされ、
孤児院修繕の真っ只中らしい、寄付金弾んだからねっ!
(いいんだいいんだ、王子たちを戦力として加え、最恐の魔女をハーレムに……)
「テイクどうした、ヨダレが出ているぞ」
「はっ、おいら、ジュース買う!」
「若、買って参りました」「すまないポイントを使わせて」
王子本人は消費を抑えるつもりらしい。
(やだぞ寝室の枠を取られるのは)
「……桃ジュース、おいしい!」
「なんだ、そんなもの普通にあるだろう、
私はここの『炭酸ジュース』というのが好きだ」
とまあ王子とナチュラルに会話、
お付きも和気藹々だから許されているが、
たまーに重戦士のオッサンが怖い目をしてくる。
(ヒットマンに狙われているみたいだ)
そのうち段ボール被って移動しそうな声だし。
「そういえばジュリン、ここの遺跡はどこの国のものとなるのだ」
「ははっ、忌み地でしたからどこの国のものでも無いかと」
「そうか、このような場所があるとわかった以上、保護は必要だな」
と、おいらテイクを見る王子。
(うわあ、取り上げられるのか、やっぱり)
「ということでテイク」
「あいよ!」
俺! 俺、いや僕、いやテイク、自重しろ、
相手は王子様しかもこのゲームの主人公様だぞ!!
「我が国の命でここを護って、管理してくれないか」
「おいら、ここに、ずっと、住む!」
「よし、もし他所の国の者が来たら……」「おっとその話は聞き捨てならない」
颯爽とドミニクお姉様きたあああああ!!
「ここがマティスリア国の管轄とでも?」
「むしろテイクは私達の仲間だ」
「そうなのかいテイク?」「みんな仲間だよ!」
そう、ゲームの味方はみんな仲間だ。
ここで次元の違う渋い声がドミニクに語りかける。
「そもそもここは、このテイクが『見つけた』というだけだろう?」
「それなのだがな、どうやらここは、テイクが居ないと機能しない」
「つまり最初に見つけた者が、ここのある意味『主人』となるという訳か」
うん、大体そんな感じでいいや。
「なので私達としてはテイクの意見を尊重し、
この場所の事は出来るだけ隠すし、テイクのやりたい事に協力するつもりだ」
ここで王子が反応する。
「テイク、やりたい事ってなんだい?」
「悪のボスを、ぶったおーーーす!!」
そのために連れてきたからね主人公、
デメリットを覚悟しての最大級のメリットだ、
新たに来た五人が上位クラスのLv20になれば、それこそラスボス退治に行ける。
(そして、そのラスボスを心の底から慕う魔女を……)
「詳しい説明を聞いてもいいかい?」
「若、ある程度は以前の尋問で」「そうだったね」
「複数人が聞いて矛盾も無い、信憑性についてはもう少し調べる必要があるが」
ジュリンとゼッカがそう言ってくれると助かる。
その男臭い会話に平然と入り込むドミニクお姉様。
「テイクに関してはウチの妹がお気に入りでな、
何なら婚約者にしても良いと考えているのだが」
「えっ?!」「テイク、飛び上がるほどびっくりしているな」
桃ジュース吹き出しちゃいそうになったよ……
(どの妹だ?! 正直、心中複雑なんだけれども!)
まず最初にドミニク姉さん(姐さん)は僕はいいんだっていう、
ゲームだと結ばれる相手じゃないからね、リメイク版では王子ルートもあったけど。
そして何より四姉妹は良い人すぎて、悪女マニア、悪女フェチの僕にとって好みじゃない。
(ただでさえ親愛度がAかBなのに……)
ファルちゃんと幸せなENDとか、
もちろん悪くは無いけどゲームならリセットしたい。
「よし、ならばウチの騎士にしよう、どうだいテイク」
「王様にも言われたけど、おいら、そのあたり、まだよくわからない!」
子供だからという理由でとりあえずは誤魔化し続けよう。
「わかった、ただし将来的には考えておいてくれよ」
「テイク、私達の方もだ、何もここが目的という訳では無い」
「りょうかーーーい!!」
……こうは言っても取り合っているのはこの修行場、アジトだろう、
俺としてはいっそここで悪女四人とハーレム小国を作りたいのだが、
ま、お互いに利害が一致して持ちつもたれつで行くのが理想かなっ!
(そのために、王子たちのレベルをMAXまで上げてもらって、そして……)
展開が少し、いやかなり早いけど、
ラスボス退治でさっさと悪女の回収だ!!
※ストーリーの矛盾やミス、
誤字脱字などは一章終了後にまとめてやります。