第25話 忘れちゃいけない宿題を片付けました 後編
ガルデーダス城の謁見間、
いつぞやぶりの国王陛下と王妃様が見守る中、
大罪人、山賊の親分カソンとその妻エバレイに処罰が下される。
(何気にこの世界の主人公、王子エリオも見てるな)
妹のチルちゃんは居ないけど。
「国王として命じる、山賊リーダーのカソン、
そしてその妻エバレイ、更にはその配下全員を、
たった今を持って、奴隷落ちとする!!」
重戦士ゼッカを先頭にモブもとい国の衛兵が、
まずはカソンとエバレイ姐さんに奴隷の首輪をはめる、
カソンはやや抵抗していたが最終的には諦めたようだ。
(エバレイ姐さんは無抵抗、命が助かったからね、二人とも)
「本来なら死刑だがマティスリア国経由で、
とある者より懇願があった、熟慮のゆえの特例だ」
(ぼっくでーーーす!)
久々に登場したな一人称『僕』!
俺こと土間幸一と本来のおいら山賊テイク、
両方が良い具合になると自分の事が『僕』になる、のかも?
(細かい事は気にしないで!)
一人称が安定しない小説は添削で怒られるゾ!
とまあそんなことは置いといてだな、
今度は後ろの配下が首輪を付けられている間に説明しよう!
(あー、何人かおいらを睨んでる、裏切り者ってバレてるな)
えっとですね、ゲームだとエバレイ姐さんを置いて、
カソン親分は次のマップへ逃げ敵である隣国へ逃げ込む、
元はそこの兵士だったんだよな、で、先のマップでボスとなる。
(酷い裏切り方をしたはずなんだけど……)
でもエバレイ姐さんは裏切られたのを知っても、
どんなに酷い事を言われ置いて行かれても夫への愛は変わらない、
うん、どう考えてもダメ男にハマった女の末路だね!!
(それでも好きで好きでたまらないらしい)
こうなると引き離すのは不可能、
カソンを処刑すると後追い確定だ、
そうなると一生、俺の頭の中でテイクが泣きかねない。
(どんな呪いだ、どんな)
なのでペガサス四姉妹改めドラゴン四姉妹にお願いして、
あっちの国王陛下に許可を貰って奴隷落ちを進言して貰った、
このあたりの理由付けや交渉は『土間幸一』のアイディアである。
(こっちの国王陛下が説明するみたいだ)
「まずは配下の者達は、ある者は農業奴隷として、
ある者は戦闘奴隷として活用する、闘技場も作る予定だ」
うん、このゲームに出てくる闘技場、
そこで戦う相手は全員、奴隷という設定だ、
実はストーリーの中で仲間になる女戦士がですね……
(それはまあ、後でいいや)
「そして主謀者であるカソンは我が城での雑務係とする」
「ぐうっ」
うん、本当ならおいらがやっていた仕事だね!
「その妻エバレイは孤児院での仕事だ、
これは個人として、院長のリーフ殿が購入したからだ」
奥で僧侶おったん改めモンクおったんが頷いている、
ちなみに購入資金は俺が修行場でポイント交換した、
武器防具やエリクサーを売って寄付したお金によるものです!
「そしてエバレイ、生涯をかけて孤児院で働けば、
その金でエバレイ本人だけでなくカソンの奴隷解放も考えよう」
「ほ、本当かい?!」「国王として嘘はつかない、誠心誠意の反省が条件だがな」
そう、もうエバレイ姐さんの心が、
どんなに酷く突き放されようとカソン親方から離れないのであれば、
もうそれを利用させて貰うしかない、これでテイクもにっこりだ。
(記憶を消してまでどうこうするつもりは無いからね)
攻略対象じゃないし、俺こと土間幸一の。
声だっておそらく青●プロかアー●の適当な女性声優、
って適当って言うなオーディション一応はあっただろうに!
「エバレイ! 俺から先に解放してくれ!」
「アンタ……」
「解放までの間、真面目に働けば月一回の面会は許そう」
これで自害は無いかな、
山賊一派が生きている事で、
これまでの被害者の賠償も追加で出来るだろうし。
(テイクの実家の事までは、知らない!)
そもそも設定として細かくあるのかどうか。
シナリオライターの頭の中ではあるんだろうけど……
「そして今回、協力してくれた者達に感謝する」
四姉妹やマリーヌ・クリネ姉弟、
すっかり武闘派となったハゲと僕にまで頭を下げる陛下、
そして陛下から意外な言葉が!
「マリーヌ、クリネ、テイクよ、我が国の兵士とならぬか」
「えっ」「えっ」「ええっ」
「無理にとは言わぬが、給金は弾もう」
(まさかのスカウトきたああああああ!!!)
まあ、この強さなら当然か。
戦ってる所を見られた覚えは無いんだけどなぁ……
「あの、私達、そんな身分じゃ」
「僕は姉さんに、従います」
「なら私はテイクくんに従うわ」
姉弟が共に僕を見てるううううう!!!
「えっと、おいら、ごめんなさい、する!」
うん、修行場へ、帰ろう。
(これで宿題は、完了っと……テイクくん、もういいよね?)
「みんな、みーんな、ありがとう!!」
納得してくれたみたいだ。
そしてぞろぞろと山賊が連れられて行く、
国王陛下も王妃も引っ込んで行くのだが……
(あれ、エリオ王子がやってきた)
ゲームの主人公様が、
限りなく捨て駒に近いモブ同然の仲間に何の用だろう。
「テイクくん、君の強さの理由が知りたい、教えてくれないか」
(あっ、これ『エリオ参戦!』ってやつだ)
うん、大乱闘しちゃうねコレ!!
「ええっと、えっと、おいら、おいら……」
断るべきか、
受け入れるべきか、
プレイヤーとしての俺の決断は……?!