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1話 幼馴染の様子がおかしい

「なあ、涼平(りょうへい)


 とある放課後、帰り道。


 僕・光汰(こうた)は、幼馴染である涼平と流歌(るか)と一緒に、3人で下校していた。……この空気、なんだか昔を思い出すようで、少し懐かしいな。


 思えば、こうして彼らと一緒に帰るのは久々だ。高校生になってからは、初めてじゃないだろうか。というのも、彼ら2人は最近「付き合う」というのを始めたそうで、そこに僕が混ざると都合が悪いらしい。

 何とも失礼な話だ。小さい頃は、僕と叶乃(かの)を入れて、4人でいつも遊んだ仲じゃないか。なのに、僕らのことを仲間外れにしやがって。


 とはいえ、2人とも僕が今日みたく「大事な相談があるんだが」と言えば、快く話を聞いてくれるような、いい奴らなのである。

 そして、「叶乃について相談なんだが」と言えば、更に真剣な表情になり、今回に至っては意外にも、向こうから「今日は一緒に帰ろう」と言ってくれた。


「……それで、相談って何だよ?」


 そんなわけで、涼平が口元を少し緩ませながら、僕に尋ねてくる。

 ……涼平くんや、人が真剣に悩んでいるというのに、真面目に聞く気はないのかね?


 まあ、いいか。急に尋ねた僕も僕だし。もう少し思い出に浸りながらこうして駅まで歩くのも悪くないと思っていたが、そろそろ本題に入ることにする。


「最近、僕に対する叶乃の様子がおかしいんだ」


「ほうほう」


 話を切り出すと、流歌はジト目で僕の顔を覗き込んできた。……こいつも大概だな。


「それで?どんな風におかしいんだ?」

「気になることを、言ってみなさいよ?」


「うーんそうだなあ」


 あまり、こいつらのペースに巻き込まれるのも厄介だ。僕は真剣な表情で答える。


「……僕と話していると、急に笑顔になったり、はたまた急に落ち込んだり……あと、顔が赤くなったり」


 だって、真面目な悩みなのだから。だが……


「「あー」」


「もしかして、何か解ったのか!?」


 急に、2人がハモった。こんなに不真面目そうに僕の話を聞く2人の方が、まさか原因を突き止められたっていうのか?

 えー?これって、真面目に考えちゃ駄目なやつだったのか?


「叶乃のことが心配で、僕は真剣に悩んでるんだ。2人とも頼む!些細なことでもいいから、どうか教えてくれ!」


 ちょっと悔しいけど、本気で悩んでいたのは事実。僕は2人に頭を下げる。そんな僕に、涼平は少し驚いた様子で、「まあまあそこまでしなくても……」と、顔を上げるように促してきた。

 というわけで、悩める僕に対し、先に問いかけてきたのは流歌の方だった。


「……あんたさ、叶乃のことを正直、どう思ってるの?」


 答えを求めているというのに質問で返してくる、この回りくどさには少しムッとするが―――問いの意図は謎であるものの、それに答えること自体は簡単だ。


「そりゃ、大切に思ってるよ。なにせ、一生をかけて責任を取ると誓った相手だからな」


「「……うわあ……」」


 あれ?またハモった。2人とも、頭を抱えながら僕から視線を逸らす。

 僕、何か変なことを言っちゃったかな?


 ……ああ、そういえば、僕はあの日の『誓い』について、誰にも言ってないんだっけ。そう思うと、今のはちょっと言葉足らずだったかもしれないな。


「―――なんだ、もう答えは出てんじゃん」


 でも、流歌は僕の言葉から何かを感じ取ったのだろうか。どうやら最近叶乃が情緒不安定な理由について、心当たりがあるらしい。


「何だよ?その答えって?」


 だから、僕はその答えを知りたくて尋ねたのだが……


「う~んそれは、当人同士の問題だしな~」

「こういうところが、お前の唯一といってもいい欠点だよなあ」


 何故だろう。2人して、肝心な部分をはぐらかし始めた。

 なんでだよ!?ケチケチしないで、僕にも教えてよ!友達だろ!?


 ……しかし、皮肉なことにここでもハモって、僕に同じセリフを吐いたのだった。


「「自分の胸に手を当てて、聞いてみたら?」」




………

……




 2人の言っている意味が、僕にはさっぱり解らなかった。

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