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突然変異で女の子になった元男はずっと引き籠って生きてたい  作者: メモ帳
また高校受験しなきゃいけないのマジ?
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第一章 一話 引き籠って生きてたい

 世の中には不思議な病気、というか現象? が存在する。例えば突然変異なんかがそうで、詳しくは知らないけどこれが起きると体に異常が発生するらしい。動物に限らず人間にも起きるそれは例を挙げるとするなら指の数が増えたり減ったりなんかもそうらしい。よく知らないけど。

 兎に角俺が言いたい事は今この世界で起きている異常の事だ。一番初めに発見されたのは三年前のアジアのどこかの国でで一人の男が失踪したという事件らしい。男が住んでいる家に家主はおらず代わりに二十代の男が家の中にはいたという。家主の年齢は五十代で接点も見つからなかった為に強制逮捕という結果で終わったらしい事件だが本当はその男こそが家主であり、若返った存在を知った政府が実験台にしたとかなんとかいう話が広まっている。まあ、公的に発表された最初の例は二年前らしいからそれが真実はどうかは分からないけど要するに俺が言いたいのはその異常が何らかの突然変異によるもので、何故かは分からないが人間限定で起こるらしいそれは人間を若返らせる。それが突然変異の力だった。


「凛さん、血液検査の時間ですよ」

「あ、はい。分かりました」


 突発性若年化症候群と長ったらしい名前を付けられたそれは通称若返り病と呼ばれていて、その目立った症例にも関わらず発症した人数は驚く程に少ない。日本でも全体で百件くらいでかなり珍しい病気なのにも関わらず発症した人間には一生生活には困らないくらいの支援が約束されている。

 若返るだけでデメリットなんてないに等しい病気なのにも関わらず、ここまで優遇されている理由は若返りという人類の夢を成しえるかもしれない存在だからだ。病気が発症してから一年間は強制入院となり多額の支援金を貰えるが、その後も定期的な検査に協力する事で入院時よりは少ないものの働かなくてもいい位には受け取れるらしい。症状の深刻さにもよるらしいが最近出来た知り合いは月に大体五十万円くらい貰っているらしい。


「凛ちゃんも大変だね。若返る前は何歳だったんだい? と、セクハラになっちゃうかな」

「いえ、前は十八だったので四歳しか変わってないです。だからあまり年齢に関しては変化とかは感じないですね」

「おや、そうだったのか。私の場合はね、肉体まで変わっちゃったから慣れるまでが落ち着かないよ」


 二十前半位の男性がいつものように二枚の写真を俺に見せてくる。隣のベッドに入院しているこの人は以前は九十代のお年寄りだったらしい。その証拠とばかりに見せてくれた一枚の写真には年寄りだった頃の男性が映っている。認知症だったらしくその名残というべきか物忘れがあるらしく、今みたいに俺は何度か同じようなやり取りを交わしているが偶に来る家族は酷く喜んでいた。次第に新しい体に慣れてくるとそういうのも無くなるそうだが、家族にとっては普通に会話が出来る事が嬉しいらしく、本人も過去の記憶ははっきりしているようで楽しそうにしているのを見るとこっちまで嬉しくなる程だ。

 そんな感じで認知症対策にも活用できると日本だけでなく世界中にも期待されている若返り病だけどデメリットとは少し違うようなそうかもしれないような、副作用的なのがあったりする。


「そうだ、ちょっと聞きたいんだけど昔の俺と今の俺、どっちの方がかっこいい?」


 二枚の内片方は今の男性と同じころ位の写真で、そこに映るのは目の前にいる男性とあまり似ていなかった。言われてみれば面影があるような気がするといった程度で、同じ人物だと言われても信じられないくらいの変化だがこれが若返り病の副作用の一つだ。あまりに若返った時の年齢差がある場合当時の姿との剥離が生じるらしく、原因としては当時の容姿を記憶するDNAがうんたらかんたらだとかよく分からないけどつまり遺伝子が覚えてないから似た感じに変化させるって感じらしい。


「よく分からないですけど、きっと今の方が素敵なのではないでしょうか」

「やっぱりそう思う? いやあ凛ちゃんは分かってるね!」

「ははは……ありがとうございます」


 俺の乾いた笑いに気付く事もなく上機嫌に言う男性に対し俺は少なくない苦手意識を持っていた。例え今が二十代だとしても以前まで老人だったと思うと少し……あれだ、うん。というか俺が好きなのは女性であってそもそも男性は対象外なのだが、でもこの体になってしまったからいずれ変わってしまうのだろうか。それが少し怖くもある。


「たった三歳ということは見た目の変化もないんだろうね。十八歳になった凛ちゃんかあ、きっとすっごく可愛いんだろうなあ。ねえ、写真とか残ってないの?」

「ないですね、あまり写真は好きじゃなくて」

「そうなんだ、でも寂しいね。当時の生きた証がないっていうのは」


 寂しそうにそういう男性を見てやっぱり悪い人ではないんだよなと思う。でも違うんだ、本当はあるけれどもう以前までの俺とは何もかもが違うんだ。


「それじゃあ血液検査は終わったので暫くしたら別室での検査になりますね。一時間くらい後にお呼びするのでその時まで少々お待ちください」


 会釈する看護婦に俺も軽く頭を下げて見送る。病室を出て行くまで見送った俺に隣から憐れみではないけど俺を気遣うような声が聞こえてきた。


「凛ちゃんは大変だね。私もそうだけど他の人達よりも検査が多いでしょ?」


 男性が周りを見回しながらそういうので俺もつられて病室全体に目を向ける。ここは若返り病の患者の数が最も多い病院でこの病室には俺を含めて合計で八人の患者がいる。とはいっても全国に若返り病患者を受け入れている病院は二つしかなくて東京と大阪に一つずつしかない。東日本で発症した患者を受け入れるこの病院には今年発症した四十人の患者が入院していて、俺が来院した時に丁度百人目の発症例だと祝われて何とも言えない気持ちになった。


「しょうがないです。先生が私の場合は少し違うみたいだとのことなので」

「そうか……なにもなければいいんだけどね」

「そうですね……何もなければいいんですけど」


 嘘だ、俺は知っている。だってその他とは違う症状を一番よく分かっているのは俺自身なのだから。


 俺は一人になりたくて寝たふりをする。目を閉じて布団に閉じ籠るが眠気なんて一切来ない。ただ時間が来るのを待ち続けて看護婦が入って来たと同時に目を開ける。


「凛さんいますか? あら、もしかして寝てる?」

「いえ、大丈夫です。今行きます」


 ベッドから出て看護婦の案内の元廊下を点滴スタンドを持ちながら歩く。若返り病患者の病室とか検査室は他の病棟とは隔離されている関係で人が少ない。あまり人と関わりたくない俺にとってはありがたい事だけどもう一つ、同じフロアに纏められてる関係で直ぐ近くにあるから疲れなくていい。


「先生、凛さんをお連れしました」

「ありがとう。よく来たね凛さん。もう歩くのには慣れてきたかい?」

「まだまだですけど、この位なら何とか。視線の高さとか足の長さとか、体の構造とか全然違くて長い時間歩いてたら気持ち悪くて吐いちゃいますけど」


 用意された椅子に座りながら冗談めかして言ってみるが看護婦と先生にそれを嘲る様子はない。顔は笑っているけれどその裏に隠された心配を感じ取れてしまう。


「男から女への性転換。本来なら有り得ない、とはまだまだ症例が少なすぎて言い切れないけど過去に一度もなかった症状が君には確認されている。だから私達からは当たり障りのない事しか言えないし君自身の努力が大事になるなんて無責任な事しか言えないけど、これからも一緒に頑張って行こう」

「はい、ありがとうございます」


 頭を下げて俺は先生に礼を言う。視線の先には視界を塞ぐ膨らみがあって、湾曲した腰から伸びる足は細長くしなやかで前よりも近くにある。太腿の上に乗せた手は小さくてそこから伸びる腕も簡単に折れてしまいそうな程に細い。そのどれもが昔の俺とは全く違う。


「それじゃあ先ずはいつものからしていこうか。準備はいいかい?」


 先生はその大人びているものの可愛らしい笑みを浮かべて俺を鏡の前まで誘導する。今の俺の身長よりも高く大きな姿鏡に映るのは薄灰色の長髪を腰の下まで伸ばした身長が一六〇ないくらいの小柄な背丈をした美少女だった。十人いれば十人が振り返るだろうその美しくも可愛らしい容姿は到底俺なんかが近づけない存在で、もし同じクラスにいてもきっと近寄りがたいだろうなと俺から避けてしまう位には浮世離れした存在で。


「いいかい? 今の君は石井亮じゃない。新しい人間に生まれ変わった、佐藤凛という少女だ。それを忘れてはいけないよ。手を伸ばしてみて、そう。そのまま鏡に触れるんだ」


 言われた通りに鏡に手を伸ばす。すると鏡の中の美少女も同じように手を伸ばして互いの掌が鏡越しにくっつく。俺と同じような動きをする彼女……いや、俺自身は目を伏せて悲しげな顔をしていた。


「まだ慣れないだろう。その姿に違和感を覚えるだろう。それを今直ぐ慣れろなんて言わない。だけど今そこにいるのは君自身なんだ。とても可愛らしい女の子が今の君なんだ」


 俺は……私は、もう戻れない。過去に以前までの自分との剥離で発狂してしまった人がいるのを知っている。沢山勉強したから。私はそうなってはいけない。そう分かっている。分かっているけど、私は今も俺を捨てきれてはいなかった。





「にしても、本当に可愛いな俺」

「俺じゃなくて私でしょ凛さん。そういう所から慣れて行かないと全然進展しないんだから」


 正直昔のお世辞にもかっこいいとは言えない姿から誰もが羨む美少女になれたことに関しては悲しいどころか嬉しさしかない。俺は昔からゲームのキャラでも男なんて選ばないしキャラメイクも拘る派だから最初からこんな美少女になれたのは幸運でしかないだろう。

 女になったのには全然慣れてないけど美少女になった件については嬉しすぎて正直どんなお洒落をしようか楽しみでしかない。ああ、支援金だけで暮らせるようになって一歩も外に出ないで一生家の中で可愛い服だけ着てお洒落して過ごしたい。若返り病後は体が固定させるから死ぬまでこの姿のままらしいのは本当に最高だ。


「欲を言えば男のままこの姿になりたかったなあ」

「男のまま美少女の方が大変でしょ? やっぱり君、変わってるわね」

「最初から女性の先生には分からないですよ。いいですか? 男のままだったら気軽に男友達とか作れますけど性別が変わっちゃったら駄目じゃないですか。学校に行かなければならないのに俺には女社会で上手くやっていける自信がないです。ああ、虐められるかも」

「大丈夫よきっと、うん。大丈夫」

「何が大丈夫なんですか……何が」


 一気に憂鬱になってしまい頭を抱えてしまう。この姿になってから気持ちの乱高下が激しい。これも女になったからだと言われればどうしようもないけど、でも直ぐに落ち込んだり喜んだりする女の子って凄く可愛くないか? やっぱりありかもしれんなんて思ったり。



 


やっぱり小説書くのって楽しいんだなって思います。週一投稿とか出来ればしていきたいかも

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