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「……これからどうするの」
これは訊いているのだろうか。どう答えてもどうしようもないように思えた。ぼくは正直に「きみとふたりして居たい」と言いたかった。でもこんな結末で、そんな願いが聞き入れられるはずがなかった。聞き入れられたとして、幸福になれるとも。
「ぼくは」
言って、ぼくは自分が勇気がないから逃げ出したことを思い出した。いや、きっと死んだほうがいいのだ。せめて別れには格好良く居るのが、男としての願いだろう。
「アナスタシア、きみは故郷に戻りなよ」
「ラズリーは」
「生き残ったなら、幸せになるんだ」
「ラズリーは」
ぼくは唇を噛んでちょっと黙った。それだけ勇気がないのだった。ぼくは、勇者じゃない。
「ぼくはまたメンバーを探す。死んでも、魔王の前に立ったのは僕たちが初めてだ。情報が伝わるだけで、役に立つ」
そんな、あんなの、アナスタシアはふるふる頭を揺すりながら嗚咽のように言葉を漏らした。あんなのバケモノだ、人間がどうにかできるものじゃない。喚き散らして彼女はぼくの胸に拳と頭を打ち付けた。大して身体の強くないぼくは、後ろに揺れた。揺れに合わせて、彼女の頭も揺らいだ。
「……行く」
やがて彼女は口を開いた。
「私も行く」
「だめだ、あれはバケモノ……」
「それはラズリーにとってもおなじでしょう!」
極まったように怒鳴りつけたあと、アナスタシアは泣き出した。
「いやだよ、あれだけ一緒に居たんだよ? もう、分かれるときは、一緒に召されなきゃ、いやだよ……」
それはぼくだって、叫びたいことだった。
「組合所へ、行こう」