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ファンタジー小説(仮)  作者: 諸星中央
15/30

15

「きみの話では仲間がいるな」


 クラウスくんを先頭に、アナスタシアが魔物を小突いて進ませる。ぼくは後ろから彼に声をかける。


「ぼくらは君たちに対する理解がない……が、きみの気持ちには共感する。きみのような存在を手にかけたいと思うわけじゃないし、条件によっては君らを守る戦闘員も見逃そう」


「戦闘員はいない」


 ぼくの言葉に簡潔に魔物が返した。


「クラウスくん。騙す可能性は充分にある。警戒は忘れないで」


 アナスタシアの言葉に縦に揺れるクラウスくんの頭を見たまま、魔物が言う。


「警戒するのは仕方ない。でも、いきなり切りつけないでくれ。本当に戦いに出るような人はいないんだ」


 しかし、おかしな話だ。気高いドラゴンの住処だから滅多に魔物が近寄らなかったのだ。そこだからこそ、住むのは分かる。しかし、それなのに戦いの術すら知らぬ魔物ばかりが来るものか?


「騙すつもりがないなら教えて貰いたいのだけど」


 ぼくは揺らがぬ魔物の後頭部を見ながら口を開いた。


「ここはドラゴンの住処だと知っていたはずだ。ならばどうして武装もせず入植を?」


 魔物は少し黙っていた。しばらく、小さな声で


「……王さまが、ここなら安全に暮らせると教えてくれた」


 と言った。


 アナスタシアが魔物を睨みつけた。落ち着いてはいたけれど、眼から魔力がほとばしっている。


「安全だと? ここがか」


 彼女の顔が敵意むき出しの笑みに変わる。


「なにを隠している? 答えないならお前の身も、お前の仲間の安全も、保証できないな」


「分かっている……」


 うつむいた魔物が力なくそう言う。毒気を抜かれてアナスタシアの魔力が霧散した。


「ファイアドラゴンが二匹、逃げていった。死んだドラゴンもいるだろう……あんたたちがやったんだな」


 魔物が逡巡を挟む。やおら口を開いた。


「ぼくだけのことじゃない、相談させてくれ。あんたたちの不利益にならないようにするから……」


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