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ファンタジー小説(仮)  作者: 諸星中央
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 魔力感知の呪符を指に挟んで振る。呪術士のお札は基本、念じることで効力を現す。魔力の存在を知りたい、そう思うと、ぼくが普段聖力を感じるのと同等程度に、魔力も感じられるようになった。近い位置でアナスタシアたちをうかがっているだろう存在は……あれか。


 わざと用を足してくる。と言って木陰へ入ったぼくは、対象を感知したあとその死角へと回って、身代わりの聖法を使った。魔法にも聖法にも分身術はあるけれど、基本他者へ力の向いた魔法は基本思想として分身を攻撃のために用い、聖術のそれは身を守るためのもの。今回はどちらでもいい。敵を欺くだけのものだから。


 分身がアナスタシアたちに合流して先へ進み出すと、魔力が動いた。身を低くする。いくら聖力を潜伏させても、視認されては意味がない。


(人型だな……)


 動いた方を見ると、アナスタシアより少し大きいくらいの浅黒い魔物だった。創造主は自分の姿に似せてぼくたち人を創ったという。より知性を持った存在として、それは彼ら闇の大地の生物もおなじだった。力を持つものは他にもあれど、魔物においても高度な知能を誇るのは人型で……つまり、そんなヤツがこそこそぼくらをうかがっているってことは、なんらかの意図がやっぱりあるのだ。


 人型のソイツは抑え込んでいるにしろたいした魔力を持たないように感じる。もっと純粋にぼくが感じられる聖力のほうもまるでない。かといって戦士のように前に出るタイプでもないだろう、見るからに身体は作られていない。偵察なのか、罠にはめる気なのか。


 倒すだけならそう苦にはならないだろう。しかし、湿っているにしろ朽ちた葉が多く、近づけばどうしても音を聞かれるし、浮遊すれば術力を感づかれるだろう。迷っていると、魔物はアナスタシアたちの方から急に目を外して山の奥の方へ駆けだした。考えている余地はないようだ。ぼくは聖法でわっと距離を詰めて、魔物に覆い被さった。


 急に現れた気配に驚いたのだろう。目を剥いて振り返ったところを頭をはたきつけて、転がすように地面に引き倒したその首にナイフを押しつけた。ぼくは感情を押し殺した声で言う。


「ぼくたちをつけていた目的はなんだ。答えろ」


 荒い息をして押し黙る魔物は、敵愾心を見せる前に身体を震わせ始めた。意外な反応に「は?」と声を漏らすと、なんと魔物は見る間に顔を歪めて、涙を流し始めた。


 聖力を一気に解放したぼくを感じたのだろう。アナスタシアが魔法で空から降りて来、その向こうからクラウスくんが駆けてくる。


 首に刃物を当て困惑するぼくを見て、アナスタシアも魔物の顔を見る。息を荒くしてぼろぼろ泣く魔物に、アナスタシアも「は?」と声を漏らした。


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