彩られた杜
その町は絵であふれていた。
人々の足音や喧騒で覆われた小さな町の広場には『風景画』『情景画』『肖像画』『風刺画』などさまざまな絵画が乱雑に置かれていた。
何一つと見たことの無い絵ではあったが底知れぬ無気味さと堂々とした気配を感じた。
しかしながら妙な違和感を感じて西洋風な石造りの建物に触った。その感触はひんやりとした石の触り心地ではなく温かみのある木と布だった。
ハリボテの建物から後ずさり、周囲を見回した。ベンチに座っている老人、犬の散歩をしている若い女、玉に乗っている道化師、そのどれもがピクリとも動かない木の板だった。
気づいた私の耳には既に喧騒は流れていなかった。
ここまでくるとここが町なのかも怪しい。
訝しんだ私は顎に手を当てた。その手触りにハッとした。
今度は頬に手を当てた。モナリザの絵画のように荒れた肌に。