4 ウジが湧いたハエの死体ほどに嫌っている
そんな色雄を前に、紳士クンは極めて困った表情を浮かべながら色雄に言った。
「あ、あの、頭を上げてください、静香さんのお兄さん。
僕にはその、お兄さんのお願いを引き受ける事はできません。
僕にはそんな大役、とても務まらないですから」
しかし色雄は頭を下げたままこう返す。
「そんな事はない!
これを頼めるのは、撫子さんの最も身近に居る君だけなんだ!
お礼なら何だってする!
俺に買える額の物なら何だって買ってあげるし、
もし、君が俺とデートがしたいと言うのなら、喜んでしてあげよう!」
「あ、いや、それは全力で遠慮します・・・・・・」
(こ、困ったなぁ・・・・・・)
紳士クンは心の底からそう思った。
撫子が色雄を投げ飛ばして以来、色雄が撫子に夢中なのは知っていたが、
超が付くほどのナルシシストで、超が付くほどのプレイボーイの色雄を、
撫子がウジの湧いたハエの死体ほどに毛嫌いしている事も知っていた。
基本的に、人に頼みごとをされると断れないタイプの紳士クンだが、
この頼みごとばかりは、引き受ける気にはなれなかった。
もし引き受けてしまったら、
後で撫子にどんな目にあわされるか分かったものではない。
なので紳士クンも色雄に向かって深深と頭を下げてこう言った。




