37 尚が一番喜んでいる
「私、感動しました!
静香お姉様は文学に明るいだけではなく、スポーツもお出来になるのですね!
私、真子よりもバスケットが上手な女性に初めて出会いました!」
その言葉が胸に突き刺さったのか、真子は力なくうつむいた。
そしてそれを見て取った静香は真子の近くに歩み寄り、
何だか申し訳なさそうに声をかけた。
「あ、あの、私、三人の兄に囲まれて育って、
外で走り回ってばかりいたので、意外と運動は得意なんです。
でも、今日私達が勝てたのはたまたまですから、その、あまり落ち込まないでください」
「落ち込んでなんかいませんよ!」
静香の言葉に食いつくように、真子は顔を上げて声を荒げた。
「これで終わりだなんて思わないでくださいよ!
私、負けっぱなしが一番嫌いなんです!
次にやる時は私達が必ず勝ちますから、覚悟しててくださいね!」
そして静香から目をそらし、一転してしおらしい口調になってこう続けた。
「あと、私の事は、真子で、いいです・・・・・・」
するとそれを聞いた静香は嬉しそうにニッコリほほ笑み、優しい口調で言った。
「はい、真子さん」
そこに尚も割って入り、ダダをこねる子供のような口振りで静かに訴えた。
「ああん!真子ばかりズルイですわ!
私の事も名字ではなく、尚と呼んで下さいまし!
私達はもう、仲良しのお友達でしょう?」
それを聞いた静香は、戸惑ったような表情を浮かべながらも、
また優しい笑みを浮かべて言った。
「そう、ですね。これからもお友達として、よろしくお願いします、尚さん」
こうして静香に、また新しく女の子のお友達ができ、
それを紳士クンは、まるでお父さんのような気持ちで優しく見守っていた。
(よかったですね、静香さん)
こうして針須家での女子会は幕を閉じ、尚と真子に見送られ、
紳士クンと静香は、針須家のお屋敷を後にしたのだった。




