25 一言一句見抜かれている
フフン、これは大きなチャンスだわ。
運動音痴の静香お姉様をバスケでコテンパンにやっつけて、
二度と尚に近づこうとは思えないようにしてやるわ。
いつも本ばっかり読んで、走る事もロクにできなさそうな陰気な文学少女が、
こういう場に来るとどんな目にあうのか、思い知らせてやる。
(みたいな事を考えてるんだろうなぁ・・・・・・)
悪だくみ丸出しの笑みを浮かべながら静香の事を眺めている真子を、
横から眺める紳士クンは、シミジミとそう思った。
ちなみにそれは全く大あたりで、その事を少なからず察した尚も、
真子に釘を刺すようにこう言った。
「ちょっと真子、これはあくまで遊びなんだから、ちゃんと手加減するのよ?
真子が本気を出すと、ゲームにならないんだから」
それに対して真子は、バスケットのボールを人差指でクルクル回しながらこう返す。
「分かってるわよ。ちゃんと皆が楽しめるように手加減するわ」
と、見せかけて、さりげなく静香お姉様にぶつかって、
尻もちをつかせるくらいなら問題ないわよね。
ひっくり返ったヒキガエルのように、
コートにスッ転ぶ静香お姉様の姿が目に浮かぶわ。
ヒッヒッヒ。
(みたいな事を考えていそうだなぁ・・・・・・)
またもや悪だくみ丸出しの笑みを浮かべながら静香を眺めている真子を、
横から眺める紳士クンは、シミジミそう思った。
ちなみにそれも全く大あたりなのだが、
さっきからずっと真子に見詰められている静香は、
居たたまれないように紳士クンのそばに歩みよって来て、訴えるように言った。
「ど、どうしましょう、私、正直あまり自信がないんです・・・・・・」
「大丈夫ですよ、これはあくまで遊びなんですから、楽しくやりましょう。
僕もできる限りサポートしますから」
「はぁ・・・・・・」
紳士クンの言葉に静香は不安げな声を漏らしていると、
「それじゃあ始めましょう!」
という尚の掛け声で、試合が始められる事になった。




