24 第一回 針須家バスケット対決
「あの、こんな格好に着替えて、一体何をするんですか?」
それに対して真子は、両手を腰にあてながらこう返す。
「この格好でバスケットコートに来たんだから、
やる事と言えばバスケットボールに決まってるじゃないの。
今からコートの半面を使って、二人ずつのチームに分かれてゲームをするのよ。
せっかくこんなにいいお天気なんだから、
外に出て体を動かす方が健康的でいいでしょう?」
「な、なるほど・・・・・・」
明らかに悪だくみをしていそうな真子の表情を眺めながら、
紳士クンがそう返すと、尚が元気よく手を挙げながら言った。
「じゃあ私、静香お姉様と同じチームがいいですわ!」
しかし真子は厳しい口調でこう返す。
「ダメよ!お嬢様は大して運動が得意じゃないでしょうが!
それに見た所、静香お姉様もあんまり運動が得意っていう感じでもないから、
そんな二人が組んだら試合にならないわよ!」
そして真子は紳士クンの方に向き直り、ビシッと指差して言った。
「乙子は結構運動が得意そうね。意外と体つきもしっかりしてるし。バスケは得意?」
「ま、まあ、そこそこはできます」
と、紳士クン。
中学までは『女男』と言われてバカにされた紳士クンだが、
運動もからっきしダメなのかと言うと決してそうではなく、
小さい頃から姉の撫子に、
バスケやサッカーや野球やバドミントンやその他もろもろの遊びに付き合わされたので、
どの競技も人の足を引っ張らない程度にはこなす事ができる。
その雰囲気を真子は紳士クンから見て取ってそう言ったのだ。
そしてポンと両手を合わせて真子はこう続けた。
「ならチーム分けは、お嬢様と私、
静香お姉様と乙子で組むのがいいと思うわ。
これなら運動が得意な人とそうでない人同士でバランスが釣り合って、
いいゲームになると思うし」
「そうね、そういう事ならその方がいいかも知れないわね」
ぜひとも静香と同じチームになりたかった様子の尚は、
少しガッカリしながらもそう言って納得した。
ちなみにこの時点で真子は、静香が尚と同じくらい運動が苦手、
いや、むしろ極度の運動音痴くらいに考えていた。
スポーツウエアに着替えた静香は、相変わらず物静かで自信がなさそうで、
運動ができるようには到底見えない雰囲気をかもし出している。




