21 特別扱いには不自由と責任が付きまとう説
「ちなみに、剛木さんはいつから針須さんのメイドさんとして働いているんですか?」
「本格的にメイドとして働くようになったのは、中学に上がってからよ。
でも物心ついた時からずっと、お嬢様のお世話係兼遊び相手として、
ずっとお嬢様のそばに付き添っているわ。もちろんこれからもね」
「へぇ、だから針須さんと剛木さんは、こんなに仲良しで、
全然主従関係の感じがないんですね。
何か、いいですね」
紳士クンはほんわかした笑みを浮かべてそう言ったが、
真子は困った様子で眉間を押さえながらこう返す。
「私としちゃあ、もうちょっと主従の関係をキッチリさせたいんだけどね。
お嬢様がそれを許してくれないのよ。
私がお嬢様を『お嬢様扱い』しようとすると、凄く怒るの。
普通それって逆だと思わない?」
「あはは、それだけ針須さんは、剛木さんの事が大好きなんですよ。
主従関係をキッチリすると、心が離れちゃうみたいで嫌なんじゃないんですか?」
「あ、あんたも、お嬢様みたいにそういう恥ずかしい事を平気で言っちゃう人なのね」
「え、あ、いや、別に、茶化して言ってる訳じゃないんですよ?」
「分かってるわよ。だからお嬢様とも気が合うのかもね。
だけど、それはそれで大変なのよ?
他のメイド達には妬まれるし、怖いメイド長には睨まれるし、
ご主人様や奥様がお許しくださっているとはいえ、やっぱり私としてはやりにくいのよ」
「色々、大変なんですね」
「そういう事。特別扱いってのは、いい事以上に何かと不自由や責任が付きまとうものなの」
「なるほど・・・・・・」
紳士クンがそう言ってシミジミ呟くと、
真子はハッと我に返ったように紳士クンから一歩後ずさり、
ビシッと指差しながら言った。




