19 和やかなお茶会
その後紳士クンと静香は、一階にある客間へと案内された。
壁や棚には大層高そうな絵画や骨とう品が飾られ、
年季の入った木目調のテーブルを挟むように、ドッシリと大きなソファーが並んでいる。
そんなゴージャスな客間で紳士クンと静香は、
この日の為にフランスから取り寄せたというハーブティーを御馳走になり、
それと一緒に静香が作ったクッキーを食べた。
クッキーは静香が心配していたよりもずっと好評で、
尚は静香の手作りお菓子に大層ご満悦だった。
そして最初は手をつけようとしなかった真子も、
強引に尚に一枚クッキーを口に放り込まれると、
その勢いで五枚程パクパクと食べてしまった。
ティータイムは至って和やかなムードで進んだ。
紳士クンと尚を中心におしゃべりが弾み、
静香も少しずつ打ち解けながら、その会話に加わった。
真子はその様子を一歩引いた物腰で眺めていたが、
さっきまでのようなツッケンドンな雰囲気は、影を潜めていた。
そんな中、静香は無類の読書の虫で、以前旧校舎の図書室に忍び込んだ際、
読書に夢中になり過ぎて、
そのまま校舎に閉じ込められてしまった話(第一巻参照)を紳士クンから聞いた尚は、
両手を合わせて立ち上がり、声高らかに言った。
「この屋敷の地下にも書庫があって、
お父様とお母様が収集された珍しい本が沢山ありますのよ?
私は正直あまり足を踏み入れる事はないのですが・・・・・・
静香お姉様、もしよろしければ、ご案内いたしましょうか?」
それを聞いた静香はキラリと目を輝かせ、今日一番の生き生きした声を張り上げた。
「ぜひ!お願いします!」
こうして紳士クンと静香は、尚に案内されて地下の書庫へ向かった。
針須家の地下にはこの他に、ワインや食料を保管する倉庫や、
尚も入った事のない謎の部屋があった。
ただ、それが静香が想像しているような地下牢獄かどうかは、わからなかったが・・・・・・。




