18 クッキーの間違った扱い方
「静香さん、今日は針須さんに、お土産を持って来たんですよね?」
すると静香はハッと我に返り、手に持っていた紙袋を尚の前に差し出して言った。
「あ、あのっ!きょ、今日は、誘ってもらってありがとうございます。
それで、あの、そのお礼と、あと、この前の、
あの事のお詫びと言っては何なんですが、家で、クッキーを、焼いて来ました。
後で、針須さんと剛木さんで、食べていただければと思って、その・・・・・・」
「まあ、私と真子の為に、クッキーを?」
尚はそう言って静香の差し出した紙袋を受け取ると、
それを両腕で(グシャッとならない程度に)抱きしめ、
生きる喜びここに極まれりという様子で瞳を潤ませながら声を漏らした。
「嬉しい・・・・・・」
「あの、お口に合うといいのですが・・・・・・」
静香が心底不安そうにそう言うと、
尚は首をブンブン横に振って声高らかに叫んだ。
「きっと合います!静香お姉様が私の為に作ってくれたクッキーが、
私の口に合わない道理がどこにありましょうか!
いえ!むしろこれを食べるなんてもったいなくてとてもできません!
今すぐに永久防腐処理を施して、屋敷の地下金庫で厳重に保管いたします!」
「いえ、あの、食べてもらえた方が、私としては嬉しいのですがっ」
あまり出来栄えに自信がないクッキーを永久保存されてはかなわないとばかりに、
静香は少しだけ声を大きくして訴えた。
すると尚はハッと我に返り、ニッコリ静香にほほ笑みかけて言った。
「そうですわね。クッキーは食べてこそその真価が発揮される物。
後で皆でいただきましょう」




