7 番長も退けた紳士クン
隣を歩く撫子が急に足を止め、目の前を指差して叫んだ。
「あぁっ!あなたは!
昨日紳士と夕日の浮かぶ河原で決闘して惨めに敗れ去った、
学園では向かう所敵無しの不良だった伴兆太郎!」
登場人物紹介をしなくて助かる撫子の言葉に、
紳士クンも足を止めて目の前を見ると、十メートル程離れたそこに、
はだけた学ラン姿で仁王立ちする、伴兆太郎の姿があった。
伴兆太郎はいつも通り筋肉ムキムキで鋭い目つきをし、
太い眉をいかつく吊りあげている。
そして頬には紳士クンがつけたのか、大きなアザがあった。
その伴兆太郎が紳士クンの目の前まで歩み寄って来て立ち止まった。
紳士クンの記憶では番長太郎、否、
伴兆太郎は紳士クンよりも頭ふたつ以上背が高く、
いつも見下ろされている感覚しかなかったのだが、
今の紳士君は背が伸びたせいか、全く対等な目線でお互いの視線をぶつけあった。
(うぅっ、伴君はやっぱりいつもの怖い感じだなぁ。
でも、あの頬のアザは僕がつけたのかな?)
そう思いながらハラハラする紳士君に、
伴兆太郎はゴツゴツした右手を差し出しながら言った。
「紳士、昨日はお前にすっかりやられちまったぜ。
俺の顔面に、あんなに見事なゲンコツをお見舞いしたのはお前が初めてだ。
お前こそ男の中の男だよ」
「ぼ、僕が、男の中の男・・・・・・」