17 対照的過ぎる二人
「あの、静香お姉様?
いつまでもそこに居てはお話ができませんので、
そろそろ乙子さんの背中から出て来てはいただけませんか?」
するとしばらくの沈黙の後、尚がそれ以上何も言わずに我慢強く待っていると、
その沈黙に耐えられなくなった様子の静香が、
おずおずと紳士クンの背後から顔を出し、
何とも居たたまれない様子で尚の前に姿を現した。
両手でクッキーの入った紙袋を持ち、本当に死にそうな程に顔色を真っ青にし、
肩を小刻みに震わせている静香は、
今からギロチンにかけられる死刑囚のようなたたずまいだった。
一方その正面に対峙する尚はどうかと言うと、両手を胸の前で組み合わせ、
ワインに酔った貴婦人のように顔を真っ赤に火照らせて、
緊張と興奮のあまりに大きく肩を上下させ、膝をモジモジとすり合わせている。
それはまるで、片想いの相手を前にして、
言葉も出せずにデレデレモジモジする、ウブな乙女のようだった。
ちなみに以前、静香が紳士クンと撫子に連れられて、
尚に謝りに行った時もこんな感じであった。
静香は尚に謝ったものの、
持ち前の人見知りのおかげでそれ以上親しくなる事はできず、
尚は尚で、静香と仲直りできた事に感激し過ぎて、それ以上話をする事ができず、
二人の関係は、ある意味平行線のままだったのだ。
この、あまりに対照的過ぎる二人の間に挟まれた紳士クンは、
このまま放っておくと何ひとつ進展せず、
静香に至ってはそのまま失神して倒れてしまいそうな様子だったので、
その静香を促すように、優しい口調で言った。




