13 中もしっかり豪邸
「静香お姉様!乙子さん!来て下さったのですね!」
それは尚の声で、待ちかねたように弾んだ声だった。
インターホンに設置されたカメラで、門前に立つ二人の姿を見つけ、
待ち切れずに向こうから声をかけてきたようだ。
その尚の声がしたインターホンに、紳士クンは慌てて顔を近づけて言った。
「は、はい!来ちゃいました!え~と・・・・・・」
と、後に続ける言葉が見つからずに紳士クンが目を泳がせていると、
インターホンの向こうの尚がそれを引き継いで言葉を続けた。
「少しだけお待ちくださいね!今門を開けさせますから!」
すると少しも待たない内に、紳士クン達の目の前の門が、
ギギィッという重厚な音とともに自動で開き、全て開ききった所で尚が再び言った。
「さあ!中へどうぞ!石畳の道をまっすぐ来てもらえば、屋敷にたどり着きますので!」
尚の言葉を聞き、紳士クンと静香は顔を見合わせ、
覚悟を決めたように頷き合い、二人で門をくぐった。
門から屋敷まで、石畳の道が百メートル程に渡って敷かれており、
その両側には、色とりどりの花が咲き誇る庭園や、緑豊かな木々、
綺麗に手入れされた芝生が広がり、その向こうには、
屋敷とはまた別の建物や、金網に囲まれたテニスコート、
更にはバスケットコートや屋外プールなども見えた。
「な、何か、本当に豪邸っていう感じですね」
テレビでしか見た事のないような光景に、紳士クンはシミジミと呟く。
それに対して静香は、そんな景色は目に入らないという様子で、
無意識に紳士クンのブラウスの裾をキュッと握りながら、後をついて行く。
(こんな大豪邸だったら、執事さんやメイドさんも居るのかなぁ)
とか思いながら、紳士クンは静香を後ろに従えて、
スタスタと尚の屋敷へ向かって歩いて行った。
そして屋敷の前にたどり着いた紳士クンと静香。




