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8 静香の指の感触しか認識できない
「え、えぇっ?」
その行動に、思わず目を見開いて声を上げる紳士クン。
(こ、これって、静香さんの手から、
ちょ、直接、食べさせてもらっても、いいって事なのかな?)
紳士クンはそう思いながら凝り固まってしまったが、
口を開けばすぐにでも食べられる所にクッキーを差し出されている以上、
それを自分の手で受け取るというのも逆に不自然だった。
(じゃ、じゃあ、食べても、いいんだよね?)
そういう結論に達した紳士クンは、遠慮がちに口を開け、
目の前のクッキーをパクッとくわえようとした。
するとそれと同時に、
静香が少しだけクッキーを持った手を紳士クンの口に近付けるようにしたので、
クッキーをくわえた紳士クンの唇に、
静香のしなやかで柔らかな指先がチョコンと触れた。
(ん、んんーっ⁉)
その瞬間、紳士クンは心の中で声にならない叫び声を上げ、
耳たぶまで真っ赤になった。
(い、今、静香さんの指が、僕に唇に、う、うゎああああっ!)
口の中に入ったクッキーをモグモグしながらも、
紳士クンの心臓はその事で今にも破裂しそうであった。




