6 紳士クンが言われて嬉しい言葉第一位
その言葉に、紳士君はフワフワと浮き上がるような気持ちになった。
『男らしくなった』という言葉は、
紳士クンが言われて嬉しい言葉第一位に位置する言葉なのだ。
今まで撫子にそんな事を言われた覚えがない紳士クンは、
すっかり浮かれた気分になって撫子に問い返す。
「そ、そう?僕って、そんなに男らしくなったかな?」
それに対して撫子は二つ返事で
「なってるわよ」
と言い、少し眉をひそめながらこう続けた。
「でも、あんまり男らしくなりすぎるのもどうかと思うわよ?
昨日も学園の番長と、夕日の浮かぶ河原で決闘したでしょう?
勝ったからよかったものの、もし負けて怪我でもしたら目もあてられないわ。
どうして男って、拳で語り合う事にロマンを感じるのかしら?」
「えぇっ⁉」
撫子の言葉を聞いて、紳士クンを目を大きく見開いて驚きの声を上げた。
(ぼ、僕が昨日河原で学園の番長と決闘をして勝った?そんな事あったっけ?)
全く身に覚えのない話に、頭をひねる紳士クン。
だが、夕日の浮かぶ河原で学園の番長と拳で語り合うというのは、
紳士クンは内心かなり憧れている事でもあった。
それは紳士クンにとって限りなく男らしい行いだったからだ。
しかも撫子の話では、紳士クンはその番長に見事に勝利を収めたのだ。
思春期の男にとってこれ以上の名誉があろうか!
すると、その時だった。