5 撫子のアドバイス
その光景を目を点にして眺めていた紳士クンに、
静香は一仕事を終えたように両手をパンパン払いながら言った。
「さ、口うるさい兄も静かになったので、中にどうぞ」
「あ、はい。あの、お兄さんは、その、大丈夫、なんでしょうか?」
草むらの中にあわれな姿で突き刺さっている色雄を眺めながら、
紳士クンが心配そうに尋ねると、静香は事もなげにこう答える。
「はい、ちょっと気を失っているだけなので心配ありません。
それにこの前撫子さんが教えてくれたんです。
『言っても聞かないバカな男は、痛い目に合わせてやればいい』って」
「そ、そうですか・・・・・・」
そう言って苦笑いを浮かべる紳士クン。
流石は以前、色雄を投げ飛ばして黙らせた撫子
(それが原因で、ややこしい事にもなってしまったのだが)
のアドバイスだったが、それを実行に移す静香もなかなかの腕っぷしと根性だった。
(し、静香さんって、普段は物静かで控えめだけど、
怒らせると凄く怖いのかもしれない・・・・・・)
静香のいつもと違う一面を見た気がした紳士クンは、
ゴクリと唾を飲んで身震いをした。
が、その静香はいつもの控え目で優しい表情に戻り、改めて紳士クンに言った。
「さあ、中にどうぞ」
「は、はい、お邪魔、します・・・・・・」




