12 実は尚の方が押しが強い
「そうね、今度の日曜日、真子は三九度の高熱を出して部活を休む事になりました。
そして私の家で看病します。そういう訳だから、日曜日は私の家に来てね?」
「どういう訳よ⁉あんた言ってる事がメチャクチャよ⁉」
「私はあなたにも静香お姉様と仲良くなって欲しいだけなの!
私が好きな人は、真子にも好きになって欲しいのよ!
だって真子は私の一番の親友で、分身みたいなものだもの」
「なっ・・・・・・」
尚の言葉に、声を詰まらせる真子。
そんな二人を眺めながら、紳士クンはシミジミと思った。
(何かこの二人って、見た目は真子さんの方が押しが強くて、
尚さんの方が控え目に見えるけど、実は尚さんの方がズバズバ何でも言って、
押し通しちゃうんだなぁ)
それは尚のあまりに素直な性格から来るものだが、
そんな尚を前にとうとう観念したように、真子はぶっきらぼうに言った。
「わかったわよ!休めばいいんでしょ休めば!
そんでもってあんたの家に行けばいいんでしょ⁉
けど、例え私が今度の日曜日の女子会に参加しても、
私は静香お姉様とお近づきになるつもりはこれっぽっちもないからね!
これだけは譲れないわよ!」
が、尚はそんな言葉は全く耳に入っていないという様子で紳士クンの方に振り返り、
改めてこう言った。
「それでは乙子さん、
真子も今度の女子会に参加して静香お姉様とお近づきになりたいと言ってますので、
真子と二人でお待ちしていますね♡」
「だから!お近づきになりたいなんて一言も言ってないっての!」
(い、色々と、大丈夫、かな?)
かくして尚の家に招かれる事になった紳士クンと静香だが、
色々な不安と心配が抑えられない紳士クンであった。




