10 狂喜乱舞を体現する
放課後、紳士クンが尚と真子の居るクラスを訪れ、
今度の日曜に静香と一緒に遊びに行く旨を伝えると、
尚はまるで、今まで生きてきた中で一番の幸せに直面したかのごとく、
隣に居た真子の両手を取り、
肩が外れるのではないかと紳士クンが心配するほどに激しくその両手を上下させ、
その後真子の腰に両手を回して抱え上げて、
ギャーギャー抗議の声を上げる真子に構わず、
まるでダンサーのようにクルクルとその場で回りに回った。
それはいつもの落ち着いて優雅な雰囲気を漂わせる尚とは全く違い、
大きな喜びに感情を爆発させる、あどけない少女のようであった。
その意外な一面に、その場に居たクラスメイト達も目を丸くしていたが、
尚はそんな視線はおかまいなしに、真子を床に下ろし、
少し回り過ぎたせいでフラフラしながらも、
紳士クンにズイッと顔を近づけて言った。
「乙子さん、静香お姉様と仲良くなる機会を作ってくださり、
本当にありがとうございます。
正直、もう静香お姉様とは、
お近づきになる事はできないかもしれないと不安になっていたのですが、
乙子さんのおかげで、そのチャンスにめぐり合う事ができました。
本当にありがとうございます!」
「い、いえ、僕はただ、静香さんをお誘いしただけで、大した事は何もしてません。
けど、少しでもお役に立てたのなら、よかったです」
紳士クンが、近過ぎる尚の顔から少し後ずさりしながらそう言うと、
尚は追いかけるようにまた紳士クンにズイッと顔を近づけて言った。
「それでは今度の日曜日、真子と二人でお待ちしております!
きっと楽しい女子会になりますわ♡」
(僕、女子じゃないんだけどね・・・・・・)
と、心の中で呟きながら紳士クンが苦笑いを浮かべていると、
尚の言葉を聞いた真子が腕組みをしながら言った。




