6 尚の素直過ぎる告白
「得になるとかならないとか、そういう事ではないのよ、真子」
そして背筋を伸ばして顔を上げ、真子の方に振り返って言った。
「私は、静香お姉様の事が好きになってしまったの。
以前特別授業で、私がメイドとして静香お姉様にお仕えした時、
静香お姉様は全くといっていいほど私と口を聞いて下さらなかった。
だけどその中で私は、静香お姉様が胸の奥に秘める優しさや清らかさ、
そして繊細さや細やかさを感じたの。
そのお姿はただただ美しくて邪念がなく、
まるで一点の穢れも無い詩の世界のようだったわ。
そんな人を前にして、その人を好きにならずにいられるかしら?
私にはとても無理。
真子、私は、私の事を好いて下さる方と、お友達になりたいとは思わないの。
私は、私が好きになった人としかお友達になりたくないの。
だから私はあなたとお友達になったのよ?
とても心が強くてたくましく、人にも自分にもとても厳しいけど、
その心の中は凄く優しい。そんな真子の事が大好きだから」
「んな・・・・・・」
尚のそのあまりに素直でまっすぐな言葉に、
真子は照れる事すら忘れてただひたすらにきょとんとした。
そしてすぐにハッと我に返り、顔をトマトのように真っ赤にして声を荒げた。
「だ、だから、そんな恥ずかしいセリフをズバッと言わないでよ!
そ、それに、私だって、尚の事が、好き、なんだから・・・・・・」
最初は勢いよく叫んだものの、最後の方はすっかり声がしぼみ、
体も塩をかけられたナメクジのように縮こまる真子。
そんな真子が憎めないやら、哀れやら、
何とも複雑な気持ちで紳士クンが眺めていると、
その紳士クンの方に尚はクルリと向き直り、
両手で紳士クンのなよやかな肩をガシッと掴んで言葉を続けた。




