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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅳ  作者: 椎家 友妻
第二話 紳士クンと尚のお誘い 
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5 ナオマコ現る

 「どゎあああっ⁉」

 と、思わず驚きの声を上げる紳士クン。

すると尚もびっくりした様子で

「キャッ」と声を上げ、

紳士クンから一歩後ずさり、申し訳なさそうに言った。

 「ご、ごめんなさい、驚かせてしまって」

 「あ、いえ、こちらこそ大きな声を上げてごめんなさい。

ちょっとぼんやりしていたもので。えと、僕に何か御用ですか?」

 紳士クンができるだけ平静を装って尋ねると、亜麻(あま)(いろ)の長い髪を、

まるでフランス人形のように結いあげた尚が、

その朗らかで愛らしい瞳を曇らせながら言った。

 「実は今日、どうしても静香お姉様にお会いしたくなって、

思い切って静香お姉様のクラスを訪ねて行ったら、

静香お姉様は図書委員をしていらっしゃって、

図書館に行けば会えるとクラスメイトの方にお聞きしたので、

さっそく図書館に行ったんです。

ですが、さっきまで居たらしい静香お姉様の姿は図書館のどこにもなくて、

こうして校舎のあちらこちらを探し回っているのですが、

なかなか見つからないのです。

やっぱり私、静香お姉様に避けられているのでしょうか?

私のように何でも自分の気持ちのおもむくままに、

物を言ったり行動を起こす人間が、静香お姉様は苦手なのでしょうか?」

 すると、傍らに立つ黒髪のボブヘアーの真子が、たしなめるように尚に声をかける。

 「だから前から言ってるじゃないの。

あっちは尚と仲良くしたいなんて思ってないのよ。

追いかけまわしてもあんたが傷つくだけなんだから。もういい加減にあきらめなさいよ」

 その言葉を聞き、尚はうつむいてギュッと唇を結ぶ。

その表情はいかにも悲しげで、静香に避けられる事が、

胸を切り裂かれるように辛いと物語っているように見えた。

その表情を目の前にした紳士クンの胸の奥は、

針で刺されたようにチクリと痛み、尚を慰めるように、優しい口調で言った。

 「あの、静香さんは決して、

針須さんの事を嫌ったり避けたりしている訳ではないと思いますよ?

(著者注※避けてはいます)

前にも言いましたけど、静香さんは物凄く人付き合いが苦手な人なので、

なかなか人と打ち解けて親しくする事ができないんです。

この前針須さんが家に招待してくれた事も静香さんに伝えたんですが、

正直静香さんは迷っているみたいで・・・・・・」

 紳士クンの言葉を尚はうつむいたまま聞き入っていたが、

その尚をさとすように真子が口を挟む。

 「ほら、尚、もうあきらめなさいよ。

あっちはあんたがどうこう以前に、人付き合い自体したくないのよ。

そんな相手と仲良くなろうとするなんて、何の得にもならないわよ?」

 するとそんな中尚は、胸の底の想いをしぼり出すがごとく、声を絞り出した。



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