29 これからは同じ部屋で寝る方向で
「あ・・・・・・れ・・・・・・?私、寝ちゃってた?いつの間に?」
そう言って首をひねる撫子に、紳士クンは慌ててこう返す。
「な、何か、ケーキを食べてから急に寝ちゃってたよ?
お姉ちゃん、ちょっと疲れてるんじゃない?」
「そう、なのかしら?
何か、寝てたと言うより、この少しの間の意識が完全に抜け落ちてるというか、
ケーキをひと口食べた所までは覚えてるんだけど・・・・・・」
「その後ケーキを全部食べて、コーヒーも飲んでたよ?その後急に寝ちゃったんだよ」
「そ、そう?」
紳士クンの言葉に撫子は首をひねったが、
確かにケーキを食べた感じは口の中に残っているし、
ブラックコーヒーを飲んだ後のあの苦い感じも、口の中に広がっている。
(じゃあ紳士の言う通り、ケーキを食べた後にいきなり寝ちゃったのね)
そう納得した撫子は、それ以上あれこれ考える事はせず、
紳士クンにケーキのお礼を言った。
一方何とか事なきを得た紳士クンは心からホッとして、自分の部屋に戻ったのだった。
こうして紳士クンに、生まれて初めての幽霊のお友達ができた。
そしてその幽霊のお友達は紳士クンがベッドに入って眠る時も、
同じ部屋で鼻チョウチンを膨らませ、スヤスヤと眠りながらプカプカと漂うのであった。
「スピー・・・・・・スヤスヤ・・・・・・」プカプカ。
(ね、寝る時くらいは、姿を消しておいて欲しいな・・・・・・)




