28 取りつくのは女の子だけ
「えっ、いや、僕はただ、愁衣さんとのわだかまりを解きたかっただけなんで、
そこまでしていただかなくてもいいですよ?」
紳士クンは両手を横に振ってそう言ったが、愁衣は右手の親指をグッと立ててこう返す。
「遠慮しなくてもいいのよ!
私はこの通り、幽霊の状態でもちょっとした軽い物なら動かす事ができるし、
それだけでも結構お役に立てると思うのよ。ただ、その代わり・・・・・・」
と、愁衣は右手の人差指で頬をポリポリかきながら続けた。
「と言っちゃあ何だけど、またこんな風に誰かの体を貸してもらって、
お菓子とかを食べさせてもらえると、凄く嬉しいなぁ、なんて・・・・・・・」
紳士クンはそれに対しては全く構わないので快く
「それは構いませんよ」
と言ったが、ひとつ気になった事があったのでそれを愁衣に尋ねた。
「ちなみに、愁衣さんにお菓子とかを食べてもらう時、
僕の体に取りついてもらうっていうのはダメなんですか?
昨日や今日みたいに、全く事情の知らない人に取りつかれると、
その後の説明とかがややこしかったりするので・・・・・・」
が、その申し出に対し、愁衣は両手でバツ印を作って声を荒げた。
「それはダメよ!だって紳士クンは男の子でしょ⁉
って事は、私が昨日触ったアレ(、、)がついてるって事でしょう⁉
女の私にアレ(、、)がついた体に取りつけと言うの⁉
そしてまたそれを私に触らせたいの⁉」
「ち、違いますよ!そ、そうですよね!
確かに男の僕にとりつくのは、
女性の愁衣さんには凄く抵抗がある事ですもんね!
その時はまた今日みたいに、お姉ちゃんに協力してもらう事にします!」
「そうしてもらえると助かるわ。
じゃあ、生身の体に取りつくのも疲れて来たから、そろそろ出る(、、)わね?
これからはできるだけ紳士クンの近くを漂うようにするから、
用がある時はいつでも言ってね?
私の声は紳士クンには聞こえないけど、
紳士クンの声は私にちゃんと聞こえてるから。
じゃあそういう事だから、これからもよろしくね♡」
「あ、は、はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
紳士クンがそう言うと、愁衣の魂が抜けたからか、
撫子は意識を失った様子でガクンと頭を垂らし、
しばらくしてからハッと目を覚まし、辺りをキョロキョロ見回して口を開いた。




