27 幽霊と世間話
「ねぇ、君はどうして学園では乙子って呼ばれているのに、
家では紳士って呼ばれているの?」
それに対し、紳士クンはたじろぎながらこう返す。
「えぇと、僕の本当の名前は蓋垣紳士っていうんですが、
学園には蓋垣乙子という女子生徒として通っているんです・・・・・・」
「ふぅん、随分面倒な事をしているのね。やっぱり君は女の子になりたいの?
いずれは外国へ行って手術とかもしようと思っているの?」
「思ってませんよ!僕は身も心も間違いなく男で、
将来は立派でたくましいジェントルメンになりたいと思っているんです!」
紳士クンは心の底からそう言ったが、それに対する愁衣のコメントはこうだった。
「・・・・・・それ、君のとっておきのジョーク?」
「違います!本当にそう思っているんです!」
紳士クンは半泣きになりながら言い返す。
「僕は本当は今の学園の男子部に入学する事になっていたんですが、
入学式の当日、本当に色々な事があって、
男なのに、女の子の格好をして女子部に入学する事になっちゃったんです・・・・・・」
紳士クンはその辺の事情をかいつまんで説明した。
そして紳士クンが今のような状況にあるのは、
決して女装趣味や女子校に潜入したいという不純な動機ではなく、
生徒会長の凄木令の陰謀によるものだという事を理解した愁衣は、
大きく頷きながら言った。
「なるほどぉ、君も色々大変な状況で毎日を過ごしているのね。
そう言えば今年の入学式はやけに騒々しいと思っていたけど、
あれは君絡みの騒ぎたったのね?」
「そうなんです・・・・・・」
紳士クンが力なくうなだれながらそう言うと、
愁衣は自分の(正確には撫子の)膝を叩き、
すっかり敵意の消えた口調で紳士クンに言った。
「そっかそっか、君は私が思っていたような悪者じゃあなかったんだね。
それに幽霊の私に礼儀正しく謝ってくれて、
こんなにおいしいケーキまでごちそうしてくれて、
私、君の事が、いえ、紳士クンの事が気に入ったわ。
これからは君の守護霊となって、ピンチの時には色々と助けてあげる!」




