26 幽霊にもちゃんと謝る紳士クン
「あの、昨日は愁衣さんにあんな事をさせてしまって、本当にすみませんでした。
不慮の事故とはいえ、僕がいけなかったです。
そのお詫びと言っては何ですが、
どうかこのケーキで許してはもらえないでしょうか?」
すると愁衣はもうさっきまでの怒りはどこへやらで、
目の前のケーキを早く食べたいという一心でこう返す。
「許すわよ許すわよ♪ああ、また生身の体でお菓子が食べられるなんて夢みたい。
ねぇ、これ、食べていい?いいのよね?」
「ど、どうぞ」
紳士クンの言葉に愁衣は
「いっただっきま~す♪」と言うと同時に、
目の前のショートケーキをひと口分フォークですくい、
それをパクっと口の中に放り込んだ。
「ん~♡おいし~い♡ケーキってこんなにおいしいモノだったのねぇ・・・・・・」
両手で自分の頬を包み、うっとりとした表情で声を漏らす愁衣。
その表情はさっきの撫子のほころんだ顔よりも三十倍くらいほころんでいた。
そしてあっという間に目の前のショートケーキを平らげてしまったので、
紳士クンが自分の分のショートケーキも勧めると、
愁衣はそれもパクパクとおいしそうに頬張り、またあっという間に食べきった。
そしてブラックコーヒーもすっかり飲み干し、
これ以上の幸せはないくらいの笑みを浮かべて息をついた。
「はぁ~♡おいしかったぁ♡」
「よ、喜んでもらえてよかったです・・・・・・」
紳士クンがおずおずとそう言うと、愁衣はテーブルに頬杖をつき、
ズイッと紳士君に顔を近づけて言った。




