23 撫子の事情
では一体どういう訳で撫子はこういう振舞いになっているのかと言うと、
撫子は先日、占いの館で自分の心の中を孔田野香子に赤裸々に暴かれ、
それを紳士クンに聞かれてしまった。
おまけにその日の夜に立ち直れないほどに落ち込み、
しかもそれを慰めてもらう為、紳士クンに一緒に寝てもらった事が、
姉としてとてつもなく恥ずかしかったのだ。
今まで事あるごとに紳士クンのピンチを救い、
たくましい姉として振る舞って来た撫子としては、
自分の超ブラザーコンプレックスな部分を紳士クンに知られ、
おまけにあんな情けない醜態までさらしてしまった自分が、
とてつもなく恥ずかしく、かつ許せないのだった。
(このままじゃあ私は、
ただのブラコンのなよなよした情けない女になってしまうじゃないの!)
それはまさに今日の香子が見せた、水落衣に対してこびるように話しかけたり、
ツレナイ態度をとられて激しくショックを受けるようなもので、
プライドの高い撫子はぜっっっっっっっっったいにそうはなりたくなかった。
(撫子は香子がそこまでのシスコンだという事は知らないが)
なのでこれからも強くて勇ましい姉としての威厳を保つ為、
これまで以上に紳士クンには厳しい態度で臨み、
例え自分のお気に入りの洋菓子店のショートケーキを目の前に出されても、
ホイホイと飛びつかないようにしようと、心に決めたのだった。




