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21 あっさりついて来た
コンコンコン。
その日の夜、家に戻って夕食とお風呂を済ませた紳士クンは、
撫子の部屋のドアをノックした。
すると中から撫子が不機嫌そうな声で
「入っていいわよ」と言ったので、
紳士クンは扉を開けておずおずと撫子の部屋に入った。
ちなみにそんな紳士クンの背後には、布由愁衣の姿もあった。
紳士クンが放課後に占いの館を出た時、
廊下にフヨフヨと愁衣が浮いていたので、
紳士クンは香子に言われたアドバイスを実行するべく、
愁衣を自分の家に招待したのだ。
もしかしたら断られるんじゃないかという紳士クンの不安とは裏腹に、
愁衣は紳士クンの家までついて来た。
もちろん愁衣の姿が視えるのは紳士クンだけなので、
撫子や紳士クンの両親は、まさか浮遊霊の愁衣が家に居るなど、
夢にも思わないのだった。
そんな中紳士クンは部屋の真ん中に置かれた丸いテーブルの前に座り、
テーブルの上に、帰り道にある洋菓子店で買って来た、
ショートケーキが入った箱を置いて言った。
「お姉ちゃん、ここのケーキ好きだったよね?
今日は僕も何だか食べたくなったから買って来たんだ。一緒に食べない?」




