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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅳ  作者: 椎家 友妻
第一話 紳士クンとつきまとう乙女
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15 スキンシップが凄い水落衣

 そして紳士クンは占いの館の中に通された。

部屋の中は相変わらず黒い布で覆われて真っ暗で、

その中央にある小さな机の上に置かれたロウソク

(の、形をした電気スタンド)の光が、

部屋の中にわずかな視界を作り出している。

その机の奥の椅子に香子が座り、その正面に紳士クン、

そして紳士クンの右隣に水落衣が座った。

元々極度の人見知りで、誰とも親しくしようとしなかった水落衣だが、

紳士クンにはすっかり心を許し、かつ紳士クンは女の子だと思っているので、

香子の目もはばからず、紳士クンにピットリ身を寄せている。

一方の紳士クンはそれを邪険(じゃけん)に引き離す事も出来ず、

ただただひきつった笑みを浮かべる事しかできない。

 (な、何か今日の水落衣さん、やけに積極的にくっついてくるなぁ。

まあ、いつも練習に付き合っているときも、凄く顔は近かったけど・・・・・・)

 そう思う紳士クンにピットリくっついている水落衣の心の中は、

この学園で唯一の仲良しである紳士クンへの親しみがガッツリ出過ぎているのと、

姉の香子へのあてつけとが、高いレベルで混ざり合っていた。

 そのあてつけを見せつけられている香子は、

目尻の下をひくつかせない訳にはいかないほどに、心中穏やかではなかった。

以前香子は紳士クンに、

『妹の水落衣を昔のトラウマから立ち直らせる事ができたら、

水落衣を好きにしていい』という意味の事を言ったが、

それはそう簡単に、

水落衣を立ち直らせる事は無理だろうという思いから出た発言だった。

しかしそんな香子の予想に反し、

紳士クンは驚くほどあっさりと水落衣を昔のトラウマから立ち直らせ、

しかもこの短期間でこんなにもベタベタするくらいに仲良し

(水落衣が一方的にベタベタしているのではあるが)になってしまった。

水落衣の事をこんなにも愛している自分にはツレナイ態度しかとってくれないのに、

突然現れた紳士クンにはあっさりと心を許し、

ベタベタイチャイチャと仲良くしている。

それを目の前で見せつけられた日には、流石の香子も、

紳士クンを槍で突き刺すような視線で睨まない訳にはいかなかった。

それに対し、その槍でブッスリ刺された気分の紳士クンは、

それでもどうする事もできず、

やっぱりただただ引きつった笑みを浮かべる事しかできなかった。

 そんな紳士クンに、香子は更に槍を刺すようなとげとげしい声色で口を開いた。



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