11 内心死ぬほど嬉しい
これでもかというくらい魂のこもった令奈の言葉が、教室に響き渡る。
そのあまりの声の大きさに、
教室に残っていた女子生徒達の視線が令奈に集中する。
そんな中令奈はひとつ咳払いをし、極めて静かな口調になって言った。
「い、嫌じゃ、ねぇよ。こ、今度、お前の家に、遊びに、行くよ」
「ホント?嬉しいなぁ♪僕、楽しみにしてるからね♪」
「お、おぉ・・・・・・」
両手を合わせて心の底から嬉しそうな顔をする紳士クンから、
顔をそらしながら令奈は返事を返す。
そして心の中から湧き上がる、嬉しいような、恥ずかしいような、
照れるような、何とも言えない妙な気持ちと葛藤していた。
(何で俺はこんな浮ついた気持ちになってんだよ⁉
こいつは男なんだぞ⁉知り合いの男の家に男の俺が遊びに行くだけなんだよ!
こんな妙な気持ちになる筋合いはひとつもねぇんだよ!)
そう思いながら、自分のみぞおち(、、、、)を右の拳でドンドンと叩く令奈。
それを見た紳士クンはまたびっくりして、ハラハラした口調で声をかけるのだった。
「れ、令奈ちゃん?大丈夫?やっぱり僕なんかの家に来るのは・・・・・・」
「だから、嫌じゃねぇっつってんだろ!」
二人の友情が深まるのには、もう少し時間がかかりそうであった。




