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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅳ  作者: 椎家 友妻
第一話 紳士クンとつきまとう乙女
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6 処女ではなく童貞

 華子の言葉に大きく取り乱す紳士クン。

ちなみにここで言った華子の『乙子さんは大人』発言は、

昨日華子が紳士クンに処女の血を求めた際に紳士クンがこれを拒否した為、

華子は紳士クンが処女ではなく、すでに大人の階段を上った女性だと解釈した。

だが実は紳士クンは処女ではなく童貞なのだが、

その事を暴露してしまうと全てが終わってしまうので釈明する事もできず、

紳士クンはただただこわばった笑顔を浮かべる事しかできないのだった。

するとそれを聞いた笑美は、

今ひとつ華子の言った言葉の意味が分からない様子で首をかしげ、華子に尋ねる。

 「どういう事やねんな?

乙子ちゃんは何でウチらよりもはるかに先の人生を歩んでるんや?」

 それに対して華子は大げさに右の掌を笑美に差し出してこう返す。

 「それは言えません!乙子さんがすでに処・・・・・・」

 「うきゃああああっ⁉」

 『乙子さんがすでに処女を卒業しているだなんて、絶対に言えません!』

と口走ろうとした華子の口を、

紳士クンは人生で初めてというくらいの奇声を上げて両手でふさいだ。

そして笑美に背を向け、声を潜めて華子に訴える。

 「は、華子さん、その事はくれぐれも内緒にしてもらえないかな。

それが周りの人にバレちゃったら僕、もうこの学園には通えないから」

 確かに、紳士クンが処女ではなく童貞だという事が周りにバレてしまったら、

紳士君はこのままこの学園に通い続ける事はできなくなるだろう。

そして仮に紳士クンが本当に女の子だったとして、

実際に大人の女性の扉を開いてしまったとしても、

不純な異性の交友を厳しく禁止するこの学園には居られなくなるだろう。

紳士クンは前者の意味で華子にそう訴えたが、後者の意味でそう理解した華子は、

何度もコクコクうなずきながら小声で紳士クンにこう返した。

 「そ、そうでした。この事は絶対に秘密にしなければならないのに、

私はうっかり口に出してしまうところでした。

でも大丈夫です。これからは神様に誓って、誰にもこの事は内緒にします。

ましてやあのおしゃべりで声が大きすぎる笑美さんには絶対に喋ったりしません!」

 「誰がおしゃべりで声が大きすぎるやって?」

 話の途中から声の大きさが普通に戻った華子の言葉を聞きつけ、

背後に立った笑美が二人を覗きこむように口を挟む。

その笑美の方に振り返った華子は、両手をワタワタ動かしながら言った。

 「え、笑美さん!いつからそこに!」

 「ずっと()るわいな!何やねんな!

ウチを差し置いて二人で内緒話なんかしてからに!」

 そう言って頬を焼けたオモチのように膨らませる笑美に、紳士クンは慌てて弁解する。

 「ち、違うんだよ!これは本当に些細な話で、

だけど、他の人に知られるとちょっと困るから、

華子さんには内緒にしてもらってるんだよ!

だから、これは笑美さんにも教えられないんだ。ゴメン!」

 そう言って紳士クンは両手を合わせて笑美に頭を下げる。

すると笑美は腕組みをしながら腑に落ちない顔をしていたが、

 「ふぅ~ん、まあ、ええけどね。

ウチも別に乙子ちゃんを困らせたい訳やないしね」

 と言い、プイッとそっぽを向いた。

ちなみにそんな笑美の背後の上空でプカプカ浮いていた愁衣も、

腕組みをしながらプイッとそっぽを向いた。

 その様子を、紳士クンはただただ苦笑いを浮かべながら眺める事しかできなかった。



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